Nickyの兄弟であるHenryは年配のソングマンで、今回Nickyといっしょに僕らを迎えてくれた。優しくて温かい彼の歌声を聴くと、子守唄を聴いているようでとても心地がいい。彼は僕らのディジュリドゥにも合わせて歌ってくれたのだが、その時にちょっとしたハプニングが起こった。
ソングマンHenryとカンチくん。このときはクラップスティックのかわりにビールの空き缶が使われた。(Copy right 2004
Henry Jorrock)
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僕が今までダーウィン周辺で出会ったアボリジナルのソングマン(東アーネム・ランドのGroote Eylandt、西南アーネム・ランドのBarunga、ダーウィン近郊のBelyuenなど)が共通して大切にしていると感じたのが「歌とディジュリドゥのフィニッシュのタイミング」だ。
この部分がピタっと合うとみんなとても喜んでくれるのだが、もしずれたりするとお愛想程度の反応が待っている。Henryも「フィニッシュのタイミングが重要だ」ということをまず教えてくれた。 |
「とにかく、わしが手をこのようにあげたら終わるんだよ・・・」
と言って彼はクラップスティック代わりのビールの空き缶を持った手をすこし上げるしぐさを見せてくれた。 僕はフンフンとうなずく。
「ほかにこういう合図もあるけどね」
と言ってNickyが手で喉を切るようなゼスチャーをしながらカラカラと笑う。
ははは・・・つまり死ぬ気で合わせろってことか?コリャ〜、ちゃんと終わらなきゃ大変なことになるのかも。
僕はHenryのソングに合わせて緊張気味に吹き始める。横でNickyが「もっと早く」とか「強く」とか細かく指示を入れてくれる。なんとか必死に吹き続ける僕。
そして曲も終わりに近づいてきたと感じたので、僕はHenryの手の動きに神経を集中しはじめた。チラチラと彼のほうを見ながら「合図はまだかーまだかー」と待っていると、ついに手があがった!
今だっ、フィニッーーーシュ!! ・・・ん?
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Mitchinがありあわせの材料で作ったクラップスティックを手に満足そうなHenry。(Copy right 2004 Henry
Jorrock)
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Henryがとても驚いたような顔をしている。ちょっとした沈黙・・。 そのあとHenryは大笑いしはじめた。他のみんなも周りで笑っている。
僕はわけがわからずただボー然。
あとで聞いてみると彼が手を上げたのは僕の後ろを通りかかったツーリストに挨拶をしたかっただけらしい。
「なんじゃーそりゃー!まぎらわしいことせんといてよ!」あれだけ脅されたからこっちは神経集中してるのに・・・。ムスっとした僕とは対照的に彼らには相当笑える出来事だったらしい。それからHenryは訪れた人にこの話をしては何度も大笑いしていた。
はずかしいなーもう・・・。