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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -バルンガ・フェスティバル編 4-

【おもしろ日本人がいっぱい】

僕が参加した2004年のBarungaフェスティバルはそれまで中心的な存在だった人物が亡くなり、規模的には縮小されているという噂を聞いていた。しかし実際に訪れてみると人の多さは相当なものだった。

僕らが到着したのは前日ということもあり、まだ人もまばらだったのだが、翌日になるとそこらじゅうに所狭しとテントが張られ、メインの通りを大勢の観光客や地元の人たちが歩いている。驚いたのは日本人の多さ。ディジュリドゥやアボリジナル・カルチャーに興味のある人から、見るのも聞くのもすべて始めてと言う人までさまざま。僕はこのフェスティバルでこれから後もいろいろな形で関係の深まる日本人に出会った。

ハナちゃんとTOYOTA 4WD

写真ははなちゃんと愛車のTOYOTA。なかには生活用品一式が機能的に詰め込まれ、、まるでキャンピングカーのようだ。

まずはさっきココズで出会った女の子2人組、はなちゃんとユウコちゃん。彼女達はTOYOTAの4WDにキャンプ道具一式を詰め込んでダートロードを選んで走ってきたというツワモノだ。ただ2人とも気負ったような感じはいっさいなくとてもナチュラル。自然と話がはずんだ。

広場で2人と話をしているとポイ(ニュージーランドのマオリの女性が儀式で使用していた道具が起源のパフォーマンスの道具)をクルクルと回しながら「ハロー?君ら日本人?」と怪しげに登場したのが天才(?)ポイ・パフォーマーのコリ。

彼はオーストラリアバイク一周の旅の途中にこのフェスティバルに寄ったらしい。僕はのちに彼からバイクを譲ってもらうことになる。

そして2003年のGarmaフェスティバルに参加し、そのまま東海岸から果てはパースまでGurraramawuy作のイダキ片手にバスキングしながら旅してきたカンチくん。彼は僕、ユウジと一緒にここBarunga、そして次のPine Creekフェスティバルで行われたディジュリドゥ・コンペティションに一緒に参加した。そして彼の一年間の旅の最後を飾ったのは僕がもっとも会いたかったディジュリドゥ奏者、Nicky Jorrokとの出会いだった。その後、僕は彼を通してパース在住のイダキ奏者「ヤスさん」を紹介してもらうことになる。

1つの出会いはさらに別の出会いを生んで次々とつながっていくことを実感した。

ほかにもギター片手にバイク二人乗りで旅していた夫婦など日本人はおもしろい人ばかりだった。


【ディジュリドゥは完全セルフメイド】

フェスティバル自体は有名で、歴史があるわりに企画の内容は手作り感に溢れていて、のーんびりと進行していく。この辺がアボリジナル・フェスティバルらしいといえばらしい。

昼間はディジュリドゥ作りや、ブッシュタッカーの試食、槍投げコンテストなどが行われる。

注目のディジュリドゥ作りは完全セルフメイド。わかりやすく言うと「ほったらかし」。原木は用意してくれているのだが、作り方はだれも教えてくれない。そんな中ディジュリドゥ職人を目指していたユウジは飛びぬけて手際がよく、各国の訪問者から質問攻めに合い、まるでスタッフのようにあっちこっち走り回っていた。そんなユウジを尻目に僕はコツコツと自分のものを作り続け、結構いいものに仕上がった。

原木の値段は聞く人によって毎回かわり、20ドルから200ドルぐらいまでの幅があった。最終的に僕とはなちゃんのとで合わせて値切った結果100ドル、つまり1本50ドルで購入した。本当はいくらだったのか.......今でも疑問が残る。

ブッシュタッカーのコーナーでは、カンガルーの尻尾が大量にさばかれてアルミホイルに巻かれそのまま火の中に。食べてみると粘りのある脂肪が牛スジのようで、おでんの具にしたらきっとおいしいだろうと思った。次回はぜひおでんで挑戦してみたい。

あとはオーストラリアではポピュラーな巨大淡水魚バラマンディをショベルカーで豪快に掘られた穴の中でキャットフィッシュ(なまず)と一緒に蒸し焼きに。これをみんなで貪るように食べる。僕はバラマンディよりキャットフィッシュのほうが好きだった。ただ淡水魚なのでどうしても独特の臭みが残り、苦手な人も多いだろう。

企画されたイベントのなかで一番盛り上がったのは槍投げコンテスト。これはエントリーすれば誰でも気軽に参加できる。
バラマンディを焼いている

こちらがブッシュタッカーコーナー。魚やカンガルーの尻尾が豪快に焼かれる

ウーメラというアボリジナル独特の槍投げ道具を使って投げるのだが、これが想像以上に難しい。100mほど先に置かれた的を狙って投げるのだがまっすぐ飛ばすのも一苦労。誰一人として的まで届く人はいなかった。それどころか数十メートル飛ばせた人には拍手喝采。ほとんどの人が失敗して苦笑いしながら恥ずかしそうに席に戻る。ただこれは一般参加の部の話。

続いて開かれた地元の人たち限定の大会がめちゃくちゃすごかった!


【これぞアボリジナル魂!脅威の槍投げコンテスト】

この部門にはRitharrnguクランのソングマンMicky Hallや、Walking with SpiritsフェスティバルでMickyとともに見事な歌を披露してくれるRoy Ashly、近くにあるManyallalukコミュニティなどからも地元の人達がこぞって参加していた。彼らはほとんどの人が的のそばまで槍を届かせるスゴ腕の持ち主達だ。ただ彼らにとっても100mも先にある的に当てるのはかなり難しいようで、6人ほど終わってもいまだ誰も的に命中させる人は現れていなかった。

そして登場したのがハンチング帽を深めにかぶり、涼しげなシャツを颯爽と着こなしたおしゃれないでたちのおじいちゃん。その風貌は見るからに威厳があり、彼らのなかでもかなりの地位の人であるだろうと感じた。

彼の投げ方は見た目からまったく違う。手で槍の中心を指でポンッと軽く弾き、全体を小刻みに揺らしバランスを取る。慎重に目標を定めながら腕を後ろに逸らしエネルギーを全身に溜め込んでいく。そこから一気にエネルギーを放出!槍は投げた瞬間からビュューーーンと唸るような風切り音をともなっている!
許可申請中

彼がその人物。見るからに長老という雰囲気だった。

そして槍は一直線に的のほうへ。次第に肉眼では捕らえにくくなっていく・・・そして数秒後、遥か彼方にある的からズバッと微かに音が聞こえた!

すこしの沈黙。そして次の瞬間・・・ウワアアアアーーー!!!

青く澄みきった空に響く大歓声。そして割れんばかりの拍手喝采に会場は包まれていった! おじいちゃんはすこし照れ笑いをうかべながら手を上げて歓声に応えている。すごい!文句なしにすごい!これがアボリジナルの人たちの槍投げの技術か!僕は全身に鳥肌が立っていくのを感じていた。

こうしてのんびりとした雰囲気の中にもいろいろな刺激があり、僕たちは飽きることなくフェスティバルを満喫していったのだった。そしてついに期待していた伝統的なパフォーマンスが始まった。

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