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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -リアル・ヨォルング・ライフ編 2-

【夜空に響く歌】

Djaluの家の女性たちは、予定がないときは一日のうちの多くの時間を庭の木の下で思い思いのことをしながら過ごすことが多い。朝からお昼にかけては子供たちの世話をしたり、本を読んだり、パンダナスの葉を編んだり・・。夕刻が近づくと焚き火を起こし、その火でお湯を沸かしてお茶を飲んだり、染織をしたり、世間話に花を咲かせたりする。そういうゆったりとした時間は、とても心地良く、気持ちをリラックスさせてくれる。

夕暮れのSki Beach
テントの向こうに陽が沈むころ、家族がポツリポツリと集まり始める。
辺りがすっかり闇に包まれる頃になると、たき木がはぜる音を聞きながら、ゆらゆらと揺れる炎を見つめ、 なにを語るでもなく、静かに、穏やかな時間を過ごす。

そして女性達が誰ともなくハミングするように賛美歌のメロディを歌い始める。 ミッションが入ってきてから、彼らは熱心なキリスト教徒でもある。

Djaluの家の庭には十字架が立ち、日曜日の朝には家の前で家族が集まって聖書を開き、ミサをする。 Djaluはヨォルングの法と儀礼にまつわる知識を深く知る長老であると同時に、キリスト教の司祭でもあるのだ。1人の女性からはじまったハミングは、やがて数人の女性達のハーモニーへと変わっていった。

いつもどおりの静かな夜に、優しく美しく響く歌声。 ときおり遠くから聞こえる笑い声や、かすかに耳に届く波の音が心地いい。 焚き火から巻き上がる火の粉が、踊るような軌跡を描きながら闇に消えていく。 顔を上げれば、澄んだ紺色の空に満点の星が瞬き、 ミルキーウェイの白く柔らかな光の帯がはっきりと見えた。 女性たちの歌声にのせて、遥か彼方の空、遠い星の向こうにまで行けるような気がした。

気が付けば焚き火の炎は小さくなり、誰かが新しい木をくべた。 また誰ともなく会話がはじまり、すこし神秘的な時間は幕を閉じる。 家に帰る人、紅茶を入れる人、まだ炎を見つめる人。 それぞれがそれぞれの生活に戻っていく。

女性たちの歌が響くこんな夜もまた、ヨォルングの人たちの生活のワンシーンなのだ。

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