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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -Walking with Spirits フェス再び 後編1-

【期待上昇スパイラル】

ジリジリと肌に突き刺さっていた日差しがすこしずつ和らぎ、Beswick Fallが闇に包まれ始めると、用意されていたスポットライトが白い砂浜を明るく照らしだした。さっきまでテントの周りではしゃぎまわっていたアボリジナルの子供たちも、ライトの光に誘われるかのようにステージの方へと駆け出していく。2004年に続き、僕にとって二度目の「Walking with Spirits フェスティバル」の幕が、ついに上がろうとしていた。

砂の上に作られたステージ
白く美しい砂浜、そして険しく切り立った崖をライトが幻想的に照らし出す。 ついにフェスティバルが幕を開ける!
2004年の時は、アボリジナル主催のフェスティバルでは最大のGarma フェスティバルに続いて充実した内容だったといえる。いや、運営費の差を考えると規模は小さいものの、こちらのほうがすごかったといえるかもしれない。

Walking with Spiritsフェスティバルの参加費はAU$20、1ドル85円として日本円で1,700円。対してGarmaフェスティバルの参加費(Yidaki Master Class)はAU$1,650。日本円にしてなんと約14万円!!その差は約80倍にもなるのだ!!

僕は今回のGarmaフェスティバルへの参加をめぐって主催者であるYothu Yindi Foundationと激しく対立した。僕たちは完全にスケジュールが固定されたYidaki Master Classではなく、費用的負担も軽く、フォーラムや講演会などを自由に組み合わせられるKey Forum(こちらへの参加費はAU$1,045)への参加を申し込むことにした。ところがその申請が明らかに不当な理由で認められず(詳しくはここでは書かないが、内部関係者からもその不当性が指摘されていた)、Garma参加をあきらめざるをえない状況になってしまった。

しかし出国直前に、主催者側がそれまでの主張を180度裏返す形でフェスティバルへの参加を認めてきた。その決定的な理由は定かではない・・。僕はこの出来事でYothu Yindi Foundationへの不信感、そして「異常なほど高い」Garmaフェスティバルへの参加費に対して疑問を強めることになったのだ。これは僕だけが感じていることではなく、多くの参加者が感じていることだと思う。

そういう意味でも2004年のWalking with Spiritsフェスティバルに参加した時には、そのすばらしさが心に響いた。 このフェスティバルはWugularrのヒーローTommyが中心になって近隣のコミュニティから家族関係にあたる人たちを集めて開催している。運営のほとんどがボランティアの手によって行われ、手作りでアットホームな雰囲気がいたるところに見られた。

なによりも特徴的なのは、ほかのフェスティバルでは伝統的な歌や踊りよりもロックバンドやヒップホップダンス、ファッション・ショーなどを中心に構成されているのに対し、2004年のこのフェスティバルでは70%以上がアボリジナルの人たちの伝統的な歌や踊りで構成されていたことだ。

Flankie LaneのGamak Mago
2004年のフェスティバルにボランティアとして参加していたユウジ。

Wugularrコミュニティ有数のソングマンであり、Mago職人でもあるMickey Hallのすばらしい唄や、彼が率いるグループ「Djilpinダンサーズ」の大地を踏みしめる力強い踊り、Numbulwarから来ていた「Morning Starダンスグループ」の洗練された唄や踊り、そして同じくNumbulwarから来ていたLambirlbirl奏者アーネス(つづり不明)の超弩級のディジュリドゥ演奏、CD『David Blanasi Tribute Album』には「White Cockatoo Performing Group(※1.)」のソングマンとして登場し、またWugularrコミュニティ有数のMago職人としても有名な長老Tom Kellyの唄など、息つくヒマがないほど見所満載だった。ともに旅をしているメンバーの1人、ノンくんは、2004年のこのフェスティバルを体験してからアボリジナルの伝統音楽にドップリとはまり込んでいった。それほどの衝撃がこのフェスティバルにはあった。

というわけで2004年のフェスティバルを体験している僕の期待は相当なものだった。 だからこそ果てしなく続くオーストラリア大陸を、このフェスティバルに参加するために短期間で縦断するという決断をし、体力的にも精神的にもフラフラになりながら必死にここまでたどり着いたのだから。

高まる期待感を抑えながら、僕達はメインのイベントが始まる前に腹ごしらえを済ませておくことにした。なぜなら本番が始まり、その内容が最高だったなら、その場所から一歩も動けないかもしれないのだから!!トイレも今のうちに・・、そうだ水も準備しておいたほうがいいな・・とまだ始まってもいないのにソワソワしだすメンバー。さあフェスティバルがついに始まる!!


【注釈】
※1. White Cockatoo Performing Group
アイコン ユーカリの森の舞踏集団「White Cockatoo Performing Group」が2006年6月大阪にやってきます。伝説的ディジュリドゥ奏者David Branasiの後継者Darryl Dikarrna Brownを中心に二人のソングマン、二人のダンサー、合計5人の舞踏集団です。
関西方面の詳しい情報はこちら。 関東方面の詳しい情報はディンカム・オージー倶楽部。 >>戻る
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