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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
イダキの内面保護リキッド「イダキの母」使用レポート 2-

【イダキの母 実録レポート】

Goriくんがこの問題を解決したいと思っているのは知っていた。

そしてある日、彼が意気揚々と「仙台にいるキシュウさんという人がイダキのお薬を調合してくれてんけどな、これがめっちゃいいねん!」と話してくれた。

最初、イダキのお薬と言われてもいまいちピンとこなかったのだが「いつも水を通したときのような音が再現できるねん!」と言われてそれはすごい!と納得した。なぜならアボリジナルの人たちが水を流し込んだあとのイダキの音の変化を実際に体験していたからだ。

このお薬を製品化したものが、今回Earth Tubeで紹介された内面保護剤「イダキの母」と、外面保護剤「イダキの父」である

「天然植物油/一番搾りの荏油(※. 1)」と「天然樹脂(未晒しのビーズワックス=蜜鑞)」を植物原料の溶剤で溶かしこんであるということで安全性などは確認済み。すでに何本かのディジュリドゥに処方し、とても良い結果がでているということだった。

サウンドをチェック しかし、いくら良いと言われても自分の大切なディジュリドゥに使ってみるのは勇気のいることだと思う。正直な話僕もかなり悩んだ。なぜならいくら天然由来の成分や植物原料の溶剤を使っていたとしても、一度使用すればオリジナルではなくなってしまう・・。友人のノンくんは「そのままでええんちゃいますの?」と助言してくれた。

うむむむむーーーどうするべきか・・。

しかし愛用のBruce(※. 2)や古いDjaluなどは乾燥からかドローンやトゥーツのひっかかりも弱く、音もスカスカとした軽い感じになってしまっていた。

カリカリに乾燥した僕のDjaluイダキのボトム
の写真。

Goriくんも「使えばかなり良くなるはずやで!」と言ってくれたし、「いっちょ使ってみるかー!」とイダキの母の処方を決断した。

当日はまず改めてディジュリドゥの内部を確認し清掃したあと、現在の音の確認。

「確認しとかんと後でわからへんやろー?これが重要やねん」

とはGoriくんの言葉。その後、病院でもらう飲み薬の容器に入った飴色の液体「イダキの母」をスポイトで慎重に流し込んでいく。ディジュリドゥを30度ぐらいに傾けかなりの量を流しこんだはずなのだが、下から液体が流れ出てくるようすはない。

「あれっ?下から流れ出てこないで?」

「そやろー内部が乾燥してるから全部吸収されてるねん」

サウンドをチェック
しっかりと今の音を覚えておくためにイダキを吹く。

そのあとも継続して流し込み続けたが、液体が流れ出てきたのはかなり後になってからだった。流れ出たあとは薬が全体にまんべんなくいきわたるように本体をゆっくりと回転させていく。溶剤に溶かされた保護剤が木肌にゆっくりと浸透したあと、溶剤だけが揮発していき必要な保護剤だけが木の内部に残る、という仕組みになっているらしい。これを考えだしたキシュウさんはすごい人だなあと関心した。

【Burrngupurrngu Wunungmurra作のイダキ】
Bruce ドローン:D# トゥーツ:F# 
長さ:147.5cm 重量:2kg
マウスピース内径:2.8cm
ボトム外径:5.2cm
【Djalu Gurruwiwi作のイダキ】
Bruce ドローン:D# トゥーツ:F# 
長さ:141.2cm 重量:2.8kg
マウスピース内径:2.7cm
ボトム外径:5.6cm

本当はそのままゆっくりと溶剤が抜けるのを待ってから試し吹きするのが望ましいが、待ちきれずちょっと吹いてみた。

するとどうだろう、すこし吹くだけではっきり確認できるぐらい音が変化していた。

本当に水を流し込んだときのような音のキラメキが戻ってきている!これはすごい!

手に入れてすぐのような新鮮な音が戻り、単純に吹くのが楽しくて止まらなくなるようなそんな感じの変化。期待以上の効果にビックリしたというのが正直な気持ちだった。

結局、Bruce、Djaluともに明らかな音の変化があった。「イダキの母」の処方は一本一本の木に合わせて変わってくる。僕の場合、とくに乾燥が進んでいたようでBruce、Djaluともに何度かにわけて流し込んだほうがいいということだった。もし自分のディジュリドゥに使おうと考えるなら、Earth Tubeとしっかり連絡をとり、自分のディジュリドゥの状態を伝えた上で慎重に施行することをオススメします。

デグチハルヒサ

 


【注釈】
※1. 荏油
荏油(エノアブラ)は荏胡麻(エゴマ)の実から精製された植物性油で、日本では古来から伝統的に木製品に使われて来た。荏油は植物油の中で一番の乾性油(乾きが早い)で、吸い込みが良く木地に深く浸透し、木地に撥水性を持たせる。>>戻る

※2. Bruce
北東アーネム・ランドDhalwanguクラン(言語グループ)出身のイダキ・マスターBurrngupurrngu Wunungmurraの呼称。Djaluにイダキ作りを学び、現在では最も積極的にイダキを作る職人の一人です。 >>Burrngupurrnguのイダキを見る >>戻る

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