【ディジュリドゥ・コンペティション】 3日目の夜、このフェスティバルの一番のビックイベントであるディジュリドゥ・コンペティションが開催された。日が落ちるころには会場もたくさんの人でいっぱいになっており、やっと大きなフェスティバルらしい雰囲気になってきていた。 あたりが真っ暗になった頃、ステージの電飾にも明かりがともされ、いよいよ始まるメインイベントを盛り上げる。このコンペティションは3部構成になっており、まずキッズ、次に初級者から中級者向け、そして最後に優勝すればマスターブラスターという称号が与えられる上級者向けのコンペティションが開催される。話によると去年のマスターブラスターは日本人だということだった。 僕、ユウジ、カンチ君の3人は上級者の部門に出場することにし、それぞれの出番を待っていた。まずは子供達がかわいい演奏を披露してくれて会場はあたたかい空気に包まれる。 優勝はメルボルンから家族旅行に来ていたという少年。結構本格的な演奏を披露してくれた。優勝商品はココズバックパッカーから子供用のディジュリドゥが渡される。ココさんなかなか太っ腹だなと感心した。 次に初級者から中級者の部門がはじまる。すでにこの時点で演奏も本格的になり、僕もこっちに出場するべきだったかな?とすこし後悔しはじめていた。なぜなら前回のBarungaフェスティバルのコンペティションに一緒に参加していたニュージーランドの友達がこの部門に参加していたからだ。彼の演奏は僕達とたいして差はなかった。 結局優勝は彼が獲得し、優勝商品として今度はキャサリンのアートセンターからディジュリドゥが渡された。彼のうれしそうな笑顔が印象的だった。 そしてついに派手なバックミュージックとともにマスターブラスター部門の開催が宣言される。会場の盛り上がりとは対照的に僕の緊張はピークに達していた。前回のBarungaは砂の上に座って吹くスタイルだったのでたいして緊張しなかったのだが今回はキチンとしたステージに上がらなければならない。基本的にライブ活動などをまったくしていない僕はこういうステージに上がって吹くのはもちろん初めての経験。しかもステージ上で英語の質問に答えなければならなかったのもきつかった。 僕は自ら一番最初に演奏することにして早速ステージへ。進行役の人がいくつか質問してくれたのだが案の定ほとんど聞き取れず、とにかく演奏させてくれと頼んでステージ中央に座り込んだ。 不思議なもので座ってディジュリドゥを持つとさっきまでの緊張がうそのように消えていき自分でも驚くほど落ち着いて演奏できた。今振り返ってみると僕らしい演奏ができたのではないかなと思う。 次にカンチ君がステージへ。彼もBarungaのときより落ち着いていて音もしっかりでている。全体の構成もまとまっていてよかったと思う。そして大きな拍手に包まれながらステージを降りた。 そしてBarungaで準優勝したユウジがステージへあがる。彼の演奏はBarungaの時よりもさらにパワーアップしていて演奏の途中からは会場から手拍子が出るほどだった。 僕とカンチ君は彼の演奏を聞きながら「これはひょっとするとひょっとするよ!」と話していた。マスターブラスター部門の参加者は僕らも含めて5人だけ。あっというまに全員の演奏が終了し審査がはじまった。 僕らはステージよこでドキドキしながら結果の発表を待つ。そして・・ 「発表します!今年のマスターブラスターは・・・ユウジ・マエダ、ジャパン!!!」 うひゃーーー!マジでユウジがとったよ!去年に引き続き日本人が優勝したことになる。 会場全体の大きな拍手に包まれながらユウジがはずかしそうにステージ中央に進む。 優勝商品はもちろんディジュリドゥ。キャサリンのアートセンターで結構値の張る代物だ。そして司会者に促されて優勝した感想を聞かれ、なにをしゃべるのか期待しながら待っていると・・ 「あー・・えー・・Anyway, Thank you」 それだけかーーーい!!と僕とカンチ君は吉本新喜劇ばりにずっこけていた。このユウジの一言は僕のなかで今年の流行語大賞を獲得することになった。 ステージを降りたあとはマスターブラスターとして新聞などの取材を受けるユウジ。僕らはお祝いの言葉をかけたかったのだがなかなかインタビューが終わらず、結局話せたのはかなりあとになってからだった。 その後僕らが優勝商品のディジュリドゥを吹かせてもらおうとユウジに頼むと彼はこう言った。 「あっあれですか、あれもう彼にあげたんで彼に聞いてみてください。」 ふとみるとそのディジュリドゥを手にニコニコしているアボリジナルの青年が横に立っていた。そしてここにユウジの新たな伝説が語られることになったのだった。 こうしてPine Creek Gold Rush Festivalはすべての幕を下ろすことになった。 次はこのフェスティバルで新たに出会ったディジュリドゥ職人、Mitchinを訪ね、僕がもっとも会いたかったディジュリドゥ奏者、Nicky Jorrokに会うためダーウィンへ出発だ。 |トップへ|
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