【大都市シドニーは寒かった・・】 「パッパーーーン!!」 「ファーーーック!!」 高らかに響くクラクションと運転手の舌打ち。一秒を競うかのように次々と流れて行く車。耳鳴りするような都会の喧騒。そして粘膜にまとわりつくような排気ガスの臭い・・。昨日までブリスベンの美しい森のなかで鳥や動物たちに囲まれて生活していた僕と真弓にとって、シドニーはあまりにも刺激が強い街だった。 「だーかーらー、東京ヴィレッジ!Do you know?」 「あ・・ああ??東京・・What??」 空港からホテルを巡るシャトルバスの運転手に、目的のバックパッカーズ(オーストラリアの安宿)の名前を伝えるが、運転手の返事はなんとも頼りないものだった。「知らないならさっき確認した時に言えよ!」という不満を抑えながら直接宿に行くことをあきらめ、シドニー・セントラル駅という所でバスを降りる。とりあえず降りてはみたものの、僕たちは待ち合わせの宿の場所を知らなかった。こんな時、携帯電話を持っていてよかったーと思う。Goriくんに話してみると宿はこの近くということで、駅で待ち合わせることにした。
「なんか・・、寒いなあ・・」 ブリスベンより南にあるシドニーは実際に気温も低いのだけれど、すれちがう人たちの表情も心なしか冷たいように思えてくるから不思議だ。なんとなく居場所のない、落ち着かない気持ちを隠しながらバックパックに寄り添うようにして迎えを待った。
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