【チキンレース?】 皆さんは牽引といえばどんな状況を想像するだろうか? 日本の交通事情のことを考えると、たぶんウインカーをだしてゆっくりと引かれていく車を想像するに違いない。ところが、ここはオーストラリア、しかもアウトバック。レベルが違った。
「あのおっちゃん、この暗闇の中ここまで来るのに時速150kmぐらい出してたんですよね・・。この道は俺の庭みたいなもんだって・・」 まさか!オージーの走り屋?焦る僕らを無視してスピードはさらに上がっていき、ついに60kmを超えた!日本だったら普通に走っているのと変わらない。しかも前の車との距離は約3m、車一台分ぐらいしかない!一歩間違えば即クラッシュだ。 「おっさん、すこしは後ろのことも考えろ!!」 この状況はちょっとしたチキンレースだ。僕らはもうパニック状態。2人とも話をする余裕などまったくなかった。 「でっ、でっ、出口さんっ!危ない!ブレーキ、ブレーキッ!!」 のりくんの悲鳴にも似た声を頼りに必死でブレーキを調整し、ロープのたるみを取り除く。この緊迫した状況がかれこれ一時間ほど続き、僕らが精神的にも肉体的にも限界に近づいたころ前の車がゆっくりとスピードを落としていく。助かったと思った・・。 「ヘイ、ガイズ!なかなかうまくいったじゃないか!気分はどうだ?」 僕らはすでに文句をいう元気もなくグッタリと疲れきっていた。彼は僕らのそんな状態を見ながら爽やかに先を続けた。 「よし、運転も慣れたところで今からが本番だ。ここから先はアップダウンとカーブが続くから気をつけてくれよ!今までよりずっと調整が難しいぞ。さあ急ごう!」 「え・・?」 彼のこの言葉に僕は谷底に突き落とされたような気分になった。ここから先の道は本当に地獄だった。スピードは相変わらず60km前後。この近辺の道は自分の庭だと豪語する彼にはスピードを落とすという考え方そのものが存在しないように思えた。この体験は有名アミューズメントパークの名だたる絶叫マシンに負けていなかったと思う。いままで車を運転してきたなかで一番スリリングで一番長いと感じた100kmだった。 遠くにアデレード・リバーの町の光が見えたときの感動は忘れられない。 【アデレード・リバー】 やっとの思いでたどり着いたアデレード・リバーの町。あまりにも遠く、そして長い一日だった。 「ガイズ!よくがんばったな。おめでとう!」 僕らは彼とがっちりと固い握手を交わし、できる限りの感謝を伝えた。彼の名前はマーコ。アデレード・リバーにあるフィッシュ&チップス店のオーナーであり、のりくんが困っているのを見かねて助けてくれた正義感の強い人だ(のりくんがマーコに出会うまでの苦労話はまた別の機会に紹介します)。彼がいなければ僕らは2日以上のキャンプを余儀なくされたかもしれない。本当にいくら感謝してもしきれなかった。
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