【若きイダキ職人 Mirarra Burarrwanga】 Garmaフェスティバルを終えた後、しばらくの間Djaluファミリーのところにお世話になっていた。シドニーを出発して以来、大陸を駆け抜けてきた僕たちは同じ場所に3日以上とどまったことがなかった。久しぶりに同じ場所でゆっくりと過ごす日々。窮屈なテントでの生活や、夜の犬の襲撃、酔っ払いの叫び声やケンカなど、いろいろあるものの、移動し続ける生活よりも気持ちが楽だった。そんなある日、Djaluが「お前達も来い」というのでSki Beachから程近いコミュニティGalpaに一緒に行くことになった。
この風景にはYirrkalaという土地が抱え続けている大きな問題が内包されているのだが、複雑な問題なのでブラブラ日記ではあまり触れないようにしようと思う。ただ現代のYolnguの人たちを取り巻く環境を知る上で必要不可欠なことなので、ぜひ一度Earth Tubeリサーチャーの1人であるのりくんの論文を参照してほしい。 ●林 靖典「ゴーブ裁判 〜アボリジナル土地所有権問題〜」 今回僕たちが訪れたGalpaコミュニティはこの採掘工場の目と鼻の先にある。工場からは絶えず耳障りな金属音が響き、外から訪れた僕たちの視点から見ればここは人が暮らしやすそうな場所には見えなかった。しかしGalpaに暮らすアボリジナルの人たちにとって、この土地は祖先から絶え間なく続く神話や伝承の舞台であり、ここを離れて暮らそうというつもりはないのかもしれない。 Djaluはこのコミュニティで行われていたお葬式に参列するためGalpaを訪れたのだった。70歳を超えてなお現役バリバリのイダキ奏者として活躍する彼は、各地で行われるセレモニーに呼ばれるだけでなく、Galpuクランの長老の1人としてセレモニーを仕切る立場でもある。車から降りるとすぐさま持ってきていたイダキを片手に砂浜へと向かう。そして砂の上に敷かれた布の上にドッカリと腰をおろし、まわりにいた人たちにセレモニーをとりおこなうための的確な指示を与えていく。ひとたびセレモニーが始まれば威厳タップリにイダキを吹く姿はまさにプロフェッショナル!Manymak!! Latju!! Dapirrik!! (←「すごい」とか「素晴らしい」とかいう場合に使うYolngu語)そんなDjaluの姿に感動すら覚えながらセレモニーを見ていると、後から誰かがGORIくんに声をかけてきた。 「Hey GOOORI!!!!」
僕が彼の名前を聞き返したのには理由があった。実はMirarraと出会うことは今回のYirrkala滞在の中で、特に楽しみにしていたイベントのうちのひとつだったのだ。彼はJapan Tourで来日したSilvesterに勝るとも劣らない卓越したダンサーであると同時に、最近メキメキと頭角を現してきている若手のイダキ職人でもある。僕は日本を発つ前、Earth TubeでMirarraの作品を何本か吹かせてもらっていて、今回のYirrkala滞在中に彼の作品を1本購入することを心に決めていた。そしてできれば彼と一緒にイダキ・カッティングに行ければいいなあ、と計画していた。ラッキーなことに彼もセレモニーに参加するためGalpaを訪れていたのだ。ここでであったのもなにかの御縁!チャンスの神様は後髪がないとはよく言ったもので(言わない?)GORIくんが直接交渉してくれることになった。 僕たちからのお願いは大きく分けて二つ。 1. 一緒にイダキ・カッティングに行きたい! 2. Latju(めっちゃいい)イダキを3本(つまり人数分)作って! そしてMirarraの答えは・・・ 「いいよ。じゃあ明日一緒にイダキ・カッティングに行こう!」 な、な、なんと!いきなり交渉成立!!僕たちは彼とガッチリ固い握手を交わし、明日の朝Galpaで再会することを約束した。 |トップへ|
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