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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -キャサリン回想 前編 1-

【キャサリン回想】

前回紹介したオイル・ゲージのトラブルで必死にキャサリンの街を目指した僕たち。 いつ車が止まるかわからないという状況で、フラフラと揺れるゲージに気持ちを翻弄されながら暗闇を走り続けるのは精神的に相当つらかった。遠くにキャサリンの街の明かりが見えた時にはどれだけうれしかったか!

早速、僕たちのキャサリンの「実家」ともいえるココズ・バックパッカーズを目指す。

ココズの風景
各国の旅行者が集まるココズ・バックパッカーズ。ゆったりとした空気が漂い居心地がとてもいい。僕たちの「家」だ。
宿の前に到着すると、いつも遅くまで開けっぱなしのはずのゲートの柵が閉まっていた。 加えて、いつもガヤガヤと騒がしい宿の中がなぜかシーンとしている・・。ちょっと違和感を感じながらも僕たちは大声でオーナーの名前を呼んだ。

「ココー!ゲート開けてんかー!!来客やでー。コーコー!」。

その声に、中からオーナーのココさんが、客に対して見せる表情とはとても思えないひどい顔で、面倒くさそうに現れた。おいおい・・客、追い返すつもりか?

そんなココさんも僕らの顔を見るとパッと表情が明るくなった。

「おおー! ジャパニーズ! 帰ってきたかー!」

「帰ってきましたがなー。今回はこの車とともにねっ!」

「おおつ! グッド・ブッシュ・カーじゃないか!! 素晴らしい!」

「ムフフ・・最強のブッシュ・カー、トゥルーピーですからねえ。去年とは違いますからねえ。」

僕とGoriくんにとって、ある理由からこの車をココさんに見せられることには特別な喜びがあったのだが、それはあとで説明しよう。

ココズの中に車を乗り入れると、去年は広い庭に所狭しと張られていたテントが、いまはたったの2つだけ・・・。異常に寂しい。去年のこの時期は日本人だけで10人近かったというのに。

ココさんに理由を尋ねてみると、なぜだかわからないが今年は旅行者がめちゃくちゃ少ないらしい。あまりの客の少なさに、ココさんに代わって宿の管理を任されていたトニーも出稼ぎに出ている状態・・。これじゃあ商売あがったりだ。
ベンチの上にとまる鶏

放し飼いにされた鶏が走り回る庭はキャンプ・グラウンドでもある。一泊8ドルと激安。たま?にこの鶏たちが僕たちの晩飯になる。合掌。

ガラーンとした寂しい庭にでかい車をドーンと止め、よいしょっと荷物を降ろしていると、キッチンの方から聞きなれた日本語ががかるぅーいトーンで聞こえてきた。

「みなさぁ〜ん、長旅おつかれさまでーっす。ウァオ、これが噂のトゥルーピーですか?? デカイですねー。」

Mr.マッスルKAZZ!!!!!
写真がカズくん。この類まれなる筋肉で、食材を次々と切り刻んでいくのだ!彼と合流してから僕たちの食生活は飛躍的に向上した。

暗闇から飄々と現れたのは、京都出身、ブッシュをさすらう料理人、カズくん。 去年の旅で知り合い、生活をともにしたイダキ・ヘッズの一人だ。

彼は去年参加することのできなかった「Walking With Spiritsフェスティバル」にどうしても参加したいと思い立ち、短期アルバイトでためたお金をすべてつぎ込んで、再びキャサリンへ乗り込んでいたのだ。

その夜、カズくんが作ってくれたおいしい夕食を食べながら、ココさんを交えてシドニーからキャサリンまでの旅の話で大いに盛り上がった。さっきもすこし説明したのだが、僕とGoriくんにとって、ココさんに今回の車を見せられることは特別なことだった。それは僕たちが去年起こした、とんでもない「大事件」があったからなのだ。その時ココさんや管理人のトニーにはとてもよくしてもらった。

実はこの事件を前回のブラブラ日記で書きたかったのだが、時間の都合で書くことができなかった。しかし、この話は「未経験のブッシュに車で乗り込む」ということが、いかに危険を伴う行為かということも含めて、いつか書く必要があると感じていた。

僕はキャサリンの街に無事到着し、再びココさんやみんなと楽しく会話できている・・。この何気ない瞬間がどれほど大切なものかということを、去年の事件で痛いほど心に刻んだ。だからいま書くべきかもしれないな・・。

というわけで今回は「キャサリン回想編」と題して、僕たちの人生観を変えるほど壮絶だった去年の「大事件」について書きたいと思います。

時はちょうど1年前、9月へと遡ります・・・。

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