【バンヤンの木の下で】 空には大きな白い雲が浮かび、すこし湿った空気からダーウィンに雨季が近づいているのがわかる。
「彼」というのは前回のブラブラ日記でも紹介したWanggaスタイルのKenbi奏者(Kenbiは彼等の言葉でディジュリドゥを意味する)、Nicky Jorrokだ。僕たちはこの木の下で彼と会うことを約束していた。(Wanggaとはダーウィン周辺および南西部に広がるDaly River地方からKimberley地方に渡って広く知られているディジュリドゥの伴奏をともなうダンスソングで、NickyはこのWanggaソングの伴奏者として周辺エリアで広く知られている。)
ディジュリドゥ奏者のGoriくん、去年のオーストラリア滞在中に出会い一緒に旅をした仲間であるノンくん、そして旅がはじまる直前に結婚式を挙げ、晴れて家族となった真弓。この4人を中心に、アーネム・ランドから遥か離れたシドニーでランドクルーザーを購入し、アボリジナル・コミュニティとフェスティバルを一気に駆け抜けた2ヵ月間。去年の旅とはまったく違うさまざまな苦労と喜びをわけあってきた それが今、最後を迎えようとしている。そう思うと「無事にここまで来たんやなあ・・」 という思いが心の奥からこみ上げてくる。 前回の旅では大きな町から遠く離れたブッシュで車が横転、大破、飛行機で病院まで搬送されるという悲惨な目にあっていた。そのこともあり、今回はスタートから慎重に慎重を重ねた旅だった。そして大きなトラブルもなく、今この時を迎えられていることによりいっそうの思いがあった。 そんなことを考えながら感慨にひたっていると、駐車場の車の影からアボリジナルの男性と白人男性がなにやら話をしながら現れた。白人男性の方は、前回のブラブラ日記で紹介した、今やBelyuenコミュニティ近郊でただ一人のKenbi職人かもしれないDavid Mitchin。もうひとりはNickyと共にCD「Rak Badjalarr」の中ですばらしい演奏を披露しているニックネーム「Tracky」ことIan Bilbil。 2人を迎え握手をしていると、背中のほうから聞き覚えのある甲高い声が聞こえる。 振り返るとNickyが笑顔で近づいて来るのが見えた。気がつけばバンヤンの木のしたには僕たちも含め10人も集まっていた。よーーし、役者はすべて揃った。ついにカラバリーの始まりだ! |トップへ|
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