1.「Ten Canoes」 オーストラリアでは、2006年のNAIDOC WEEKに合わせた6月29日より、「Ten Canoes」というアボリジナルを題材にした映画の上映が始まりました。映画館での上映はすでに終わりましたが、DVDが2007年1月より発売されましたので紹介したいと思います。DVDはPAL方式ですが全リージョン対応のため、最近の日本のDVDプレーヤーでも見ることができると思います。 Ten Canoesは、人類学者ドナルド・トムソン博士によって残された1930年代のヨォルングの写真に触発されて制作されました。ドナルド・トムソン博士について、筆者は2001年に当時の日本ディジュリドゥ協会季刊誌で紹介したことがありますが、詳しくは「Thomson of Arnhem Land」というビデオを参考にしてください。 映画の設定は1930年代のアーネム・ランド。ヨォルングの男たちが水鳥の卵を狩猟に行く旅に出ます。その途中、兄嫁の一人に恋をした若者に対して、長老が教訓的な古い民話を伝えて行く、という内容です。物語の展開も面白いので、アボリジナルに興味がない人でも楽しめると思います。また、映画はアーネム・ランドのRamingining周辺で撮影され、1930年代の物語部分はまるでトムソン博士の写真のように白黒、長老が語る古い民話部分はカラーとなっており、どちらの話が進行しているのかわかり易くなっています。 映画館バージョンのTen Canoesは、物語の進行役としてDavid Gulpililによる英語のナレーションが一部あるものの、基本的にはすべてヨォルング語(映画の中では4つの方言が使われている)で語られています(英語の字幕有り)。ちなみに、DVDには物語の進行役部分も含めてすべてヨォルング語にできるオプションがあります。 アボリジナル言語による初めての映画ということで注目されましたが、映画の出来もすばらしく、2006年のAustralia Film Industry賞で6部門において最優秀賞を受賞しました。 Raminginingの人たちは「この映画を作ることによってヨォルングの文化を後世のヨォルングに残すことができる。」と言って協力してくれた、と監督のRolf de Heer は述べています。映画の配役について、Raminginingの人たちはヨォルング のKinship(家族関係)に忠実にしたそうで、例えば嫁を配役するにも、候補の半分がMoiety(半族)の関係で振り落とされ、正しいMoietyにも細分化があるため、更にその半分が不適格となり、配役に苦労したとの裏話もあります。 この映画自体が、オーストラリア先住民の学習目的も兼ねて制作されたことに間違いありません。DVDの付録部分には、通常のDVDにあるような出演者や監督のインタビューの他、オーストラリア先住民学習ガイド、トムソン博士による当時の写真、Google Earthのようなアーネム・ランドの空撮など盛り沢山です。イダキマニアにとっておいしい部分もあります。映画の最後のダンス部分や付録の一部で流れるBGMは、映画の出演者の一人でCharlie McMahonやNomadの録音(懐かしいなあ)にもソングマンとして参加しているBobby Bununggurrが唄い、伴奏のイダキはこれまた出演者の一人であるPeter Minygululuが吹いています。特にイダキの演奏は、同じヨォルングでも聞き慣れたYirrkala周辺の現在のスタイルとは違う、昔のフィールド録音で聴けるようなオールド・スタイルで感動ものです。 詳しくは映画のオフィシャルサイトhttp://www.tencanoes.com.auをご覧ください。このサイトでDVDも購入できます。 |トップへ|
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