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Research 林 Jeremy Loop Roots
Peter Lister|イダキ奏者/ヨォルング文化研究者
Peter Listerのディジュリドゥ・ページ

7. Moyle博士の音楽表記

Alice M. Moyle博士は、1970年代にオーストラリア全土に渡るアボリジナル音楽の録音を行い、録音したアボリジナル音楽について標準的な音楽表記に基づいた表記方法を用いて表現している。

Moyle博士の書いた資料は、特に海外ではなぜか手にいれにくいので、私はこのページでそのいくつかの例を(私に似合わず)音楽的背景とともに再現してみました。この資料はLPレコード(AIAS/14, Australian Institute of Aboriginal Studies, Canberra, 1978)の付属のブックレットから引用しており、そのLPは現在では廃盤になっている。

[申し訳ありませんが、音楽表記にサウンド・ファイルが付いていません。将来的にはサウンド・ファイルを付加するかもしれません。」

ブックレットの29ページでMoyle博士いわく:

記号と略記法

■音程

下記の表記方法は、A4=440cps("Characters Per Second"の略で、1秒間に入る文字数などを表している)に関する音程を表す記号として選ばれている。加線(五線を超える音程を表すために五線譜の上下にかかれる線)、臨時記号(♯、♭など)や、その他の特殊表現の使用を避けるために、音程の転位や必然的な単純化が行われている場合もあります。これらの音楽表記は、オリジナルのフィールド録音のテープのダビングを聞いて作られました。

音程が下がっていくことを表した、四角で囲った表記。これは、使われている音程の変化の一覧を表している。(例えば、上向き、下向きの矢印などの)修飾的な表記も追加される。「調号(調や音階に♯や♭を示したもの。曲のキー)」がある場合には、その音程変化の一覧はたった一度だけ表れ、それぞれの五線譜表の冒頭には再現しない。音程を示す記号は、音楽理論では必要な曲のキー(調)に一致するような観点で選ばれてはいない。
ここに表記されている音は、ディジュリドゥの伴奏で聞かれる音です。高い方の音は、ハーモニクス(トゥーツ / ホーン)です。
すばやく上昇しているスラー(高さの異なる複数の音符につける弧線)は、ドローンの音程から、吹き込んだ音、あるいは高い方の音(トゥーツ)へとディジュリドゥ奏者が演奏したのを表している。
ここで表記されている2番目の記号は、ディジュリドゥのリズミックなパターンの終結部分で、パタリと演奏が終えられている事を表している。
上向きの矢印(a)と下向きの矢印(b)は、表記されている音程よりも(半音以下にこまかく)、(a)よりシャープしている、(b)よりフラットしている事を表している記号です。
二つの音の間を下降していくという事を表す記号。これは、表記されている一つの音の後と前におかれる。
不明瞭な音程の音を表す記号。
ディジュリドゥ奏者がおこなうドローン音に加えた声の音
ディジュリドゥ奏者が喉を使った、ガラガラ声のような音
ディジュリドゥ奏者が、喉を使って震え声を長く伸ばしている間に、周期的に音程の装飾をする音
ガチャガチャと鳴らす音(Rasp)。矢印は、二つの部分に分かれた楽器を擦り合わせる時の最初のインパクトを表している。

【拍子とテンポ】

表記されている音符の9倍の持続的な長さの音を表す記号。8分音符を9個分という事で、3連のグループではない。
メトロノームでのテンポを表す表記。
表記されているテンポを加減するという事を意味する記号。「Meno Mosso (それまでのテンポよりもゆっくりと)」と同じ意味合い。

【小節線】
小節線を置く場合、通常は「長音」の後に置かれる(例えば、一続きの音節の最後に起こる長めの音、あるいはそれに代わる「休符」)。短めの小節線もあり、それは一続きの音節の一部として起こる「長音」の後に置かれる。このような表記のために使われるので、縦線がアクセントを意味するという事はない。

【一続きの音節】

五線譜表の上に表記されている丸の中にある数字は、1曲の中に続いて起こる「一続きの音節」の数を表している。
仮に全体で4つの「一続きの音節」があるとすれば、それに続く部分的な「一続きの音節」を表している。
リフレイン・ストリング(反復して繰り返される音節)、あるいは規則的に他の「一続きの音節」と交互に起こる「一続きの音節」。
歌の一部分で「一続きの音節」と規則的に交互におこる、コール、鳥の鳴き声の模倣など

■メロディー的な区分

I I1 I2 など メロディー(下降) で分かれている区分(Moyle, 1974:198)

■略 語

bcl 一対のブーメラン・クラップスティック
dr (ハチュウ類の皮で作った)スキン・ドラム
dj ディジュリドゥ
f 女性一人の声
f2 女性ニ人の声
fgp 女性グループの声
f/dju ディジュリドゥを指ではじく音
hcl 手拍子
h/g 地面を手、あるいは物でたたく(st/gは重たいスティックで地面をたたく事を表している)
h/l 女性シンガーがひざをたたく音
jm 若い方の男性シンガーの声
m 男性一人の声
m2 男性ニ人の声
mgp 男性グループの声
mfgp 大人のグループ(男性と女性両方の声)
sr サヤのついた種をガチャガチャと鳴らす音
sts 一対のスティック
st/gst 地面に置いたスティックをたたく音
st/dj ディジュリドゥをスティックでたたく音
v 声(ディジュリドゥのの表記の場合は、この「v」の記号は、ディジュリドゥ奏者が演奏している間に行う声を混ぜた音を表す)
V シンガーが行う吸気


参考例

●楽譜 17. ディジュリドゥ (Side 2, Band 1a), Borroloola, NT. 西アーネム・ランドの演奏者

楽譜 17

●楽譜 18.
ディジュリドゥ(Side 2, Band 1b)Borroloola,NT.東アーネム・ランドのスタイルで女性が演奏している

楽譜 18

●楽譜 19. Groote Eylandtのディジュリドゥ奏者によるBタイプの例

楽譜 19

●楽譜 20. Delissavile(現Belyuen)のディジュリドゥ奏者によるAタイプの例

楽譜 20


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