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Research 林 Jeremy Loop Roots
シリーズ講議:アボリジナルの文化と社会
【第4回】「父の兄弟も父―アーネムランドの親族組織」/2005.8.21

1.はじめに
(1)親族名称と親族呼称

    私たちが日常使っている親族名称:父、母、姉、弟、祖父、祖母など。
    親族呼称:父ちゃん、お母さん、おじいさん、母ちゃん、姉ちゃんなど。各家庭や地方によって異なる。

    親族名称は、細かくいえば、それぞれの文化ごとに少しずつ違いがある。親族名称が使われる範囲、つまり親族の範囲も民族によって少しずつ違う。たとえば、 結婚した相手(配偶者)の兄弟や姉妹を私たちはオジとかオバと呼び、彼らも親族に含 めるが、この人たちを「姻族」として区別し、親族に含めない文化もある。

(2)親族名称の2大区分

    世界人類の親族名称は大きくふたつに分けられる。
    1. 記述的な体系 …… 日本やヨーロッパなどにみられる体系。
    2. 類別的な体系 …… オーストラリア先住民アボリジナルなどにみられる体系で、親族をグループにまとめ、そのグループに属する人びとを単一の名称で呼ぶ体系。

2.「父の兄弟も父」とは

    2種類の親: 子供の誕生に生物学的な役割を担った遺伝学的な親と、社会的な親。
     社会的な親: 子供の誕生にはかかわらないが、その子供に対して遺伝学的な親とまったく同じ役割をもつ人。これを「社会的な親」という。アーネムランドのアボリジナルは、そうした例。
図1.
図1.

    わたし(Ego)Aからみて
    生物学的な親は1と2。これに社会的な親を加えると、父は2と4、母は1と3。AとBは兄弟姉妹ですから、Bにとってもこの関係は変わりません。

    では3と4の人がそれぞれ結婚し、子供ができたとき、その子たちとA、Bはどういう関係になるでしょうか。
図2.
図2.
    A、Bにとっての父のひとり4の場合 …… 子供E,Fの父は2と4
    同じく母のひとり3の場合 …… 子供C、Dの母は3と1
    E,F・C,DとA,Bの関係 …… 兄弟姉妹(イトコではない)。それぞれ父または母が同じ。人類学では交叉イトコと平行イトコという。結婚の条件。
    その結果おこったこと。
    アボリジナルの社会を初めて観察したヨーロッパ人(記述的な親族名称体系をもつ人)は、この親族名称の体系が、当初は理解できなかった。その結果、アボリジナルには「家族」の概念がなく、アボリジナルは「原始乱婚の社会に生きる石器時代人」という評価。異なる民族文化の理解は、外から眺めただけではできない。

3.祖父とは誰?

    アボリジナルは類別的な親族名称、つまり親族をグループに分けてそれぞれのグループに属する人を単一の名称でよぶ体系。祖父もこの体系にしたがう。

    図3.
    図2.
    AとBにとっての祖父: (1)父の父であると同時に、(2)父の父の男兄弟a、bと、(3)父の父の父の男兄弟の息子Hでもある。

4.類別的な体系をあてはめてみると・・・

    アボリジナルの親族名称体系を自分の親族にあてはめ、下の余白にかいてみる。違いが よくわかる。それだけではなく、アボリジナルはとても広い範囲の人びとを親族だとすることがはっきりする。

>>次回のYidaki Vibes Earthは3月4日(土)に開催されます

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