Peter Lister|イダキ奏者/ヨォルング文化研究者
Peter Listerのディジュリドゥ・ページ

2. Top Endの伝統音楽とディジュリドゥ

-目次-
 2-1. ノーザン・テリトリー州Top Endの伝統音楽とディジュリドゥ
 2-2. ディジュリドゥの使われる地域
 2-3. 地域による伝統音楽のスタイル
 2-4. Top Endのソング・タイプ
 2-5. Top Endのディジュリドゥの演奏とスタイルの多様性
 2-6. Top Endの伝統音楽の用語集
 2-7. ディジュリドゥを伴った伝統的なアボリジナル音楽の参考文献

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2-6. Top Endの伝統音楽の用語集

この用語集は、読者の皆さんがこのウェブサイトの内容や、その他の似たようなトピックの文章を理解するために用いていただきたい。全ての用語を網羅してもいないし、そうするつもりもありません。単なる補助として使って下さい。英語や、その他の言語とは違って、アボリジナルの言語はその話し手のものです。それだけで、読者がここに紹介されているアボリジナルの言葉を自分自身のため、あるいは商業目的で使うべきではないかもしれない。

コメントや用語の追加の御提案はPeter Listerメーラーが立ち上がります)まで御連絡下さい。



ABCDE|F|G|H|I|J|K|L|MNOP|Q|R|STU|V|W|X|Y|Z

-A-
■Aeroplane noises

飛行機のノイズ。非伝統的なアボリジナルの人々と、ノン・アボリジナルの人々が演奏するディジュリドゥの音を表現した、Top Endの伝統的な人々が用いる描写的な言葉。

■A-type accompaniment

Aタイプの伴奏。オーストラリアの民族音楽学者Alice Moyleが、西、南、中央アーネム・ランド、そしてキンバリー、Carpentaria湾付近の地域でのディジュリドゥの演奏スタイルを表した言葉。オーバートーン(トゥーツ)は使われない。 >>詳しく読む

■Arnhem Land

アーネム・ランド。ノーザン・テリトリー州の北部地域。オランダ人の乗組員が、1623年にこの地域を訪れ、自分達の船の名前「Arnheim」から名付けた。

A 〜 Z

-B-
■B-type accompaniment

Bタイプの伴奏。オーストラリアの民族音楽学者Alice Moyleが、オーバートーン(とその他のユニークな演奏テクニック)を特徴的に使う東アーネム・ランド、そして中央アーネム・ランドの一部と、Groote Eylandtでのディジュリドゥの演奏スタイルを表した言葉。  >>詳しく読む

■Balanda

バランダ。ノン・アボリジナルの人々に共通する明るい肌の人々を指す言葉。このヨォルングの言葉は、マカッサンの言葉でオランダを表す「hollander」にその起源がある。

■Bilma

クラップスティック、ビルマはヨォルング特有の言葉で、ボーカルの伴奏に使われるクラップスティック。クラップスティックだけが使われる(ディジュリドゥが演奏されない)歌のカテゴリーを表す言葉でもある。

■Bukulup

中央、東アーネム・ランドのある種の「浄めの儀式」(ヨォルングの言葉)

Bunggul(Bungurl、Bunggal、Bungleとも表記される)

音楽と踊り、特にDjatpangarriを意味するヨォルングの言葉。  >>詳しく読む

A 〜 Z

-C-
■Clan

(家族特有の)定義づけられた親類関係と土地を所有するグループ。このようなグループは、自分達のクラン独自の言葉を話し、所有している。そして、クラン独自の知識、もの、デザイン、絵画、クランの土地に関連のある歌を所有している。クランの家系は、共通の祖先からきている(スコットランド人と同じような様式)。そのようなクランが、東アーネム・ランドには40種以上ある。下記の図は、東アーネム・ランドでよく知られているクランのいくつかと、そのクランが属する半族の一例を表しています。
Dhuwa Yirritja
Datiwuy Dhalwangu
Djambarrpuyngu Djinang
Djapu Ganalbingu
Djarrwark Gumatj
Galpu Gupapuyngu
Liyagalawumirr Madarrpa
Marrakulu Manggalili
Marrangu Munyuku
Ngaymil Ritharrngu
Rirratjingu Wan'gurri
Wagilak Warramirri

■Clan songs

(「2-4. Top Endのソング・タイプ」をご覧ください)

■Clapsticks (Tapsticks、Clicksticksとも呼ばれる)

硬い木(たいていironwood)から作られるこのスティックは、音楽演奏時には歌の伴奏で使われる。通常、個人所有の楽器で、クランに属するデザインが施されている。現在ではアーネム・ランド以外でも、ヨォルングの言葉のbilmaという名称が広く知られている。

■Cult Songs

(「2-4. Top Endのソング・タイプ」をご覧ください)

A 〜 Z

-D-
■Dhuwa

全ての生命、物、現象が属する東アーネム・ランドの二つの半族の内の一つ。

■Didjeridu

以前は「Didgeridoo」という綴りが使われていた)通常、Top End以外で、最も一般的にはノン・アボリジナルの人々が、幅広い多様な素材から作る現代的な中空のチューブで、一つの楽器として使われている。アボリジナルの言葉ではない。

■Distal

演奏者から最も離れているディジュリドゥの端。現代のディジュリドゥ用語では「ベル」と呼ばれることもある。反対語はproximal 。

■Djarrak

アジサシ(見た目がカモメに似ている海鳥)を意味する一般的なヨォルングの言葉

■Djatpangarri

北東アーネム・ランドのBunggul形式の伝統的なソング・スタイル。GumatjクランのDhambidjawaが最初の作曲者だと言われている。このような北東アーネム・ランドの大衆的な歌の多くは、日々の出来事に関したものが多い。(ヨォルング語)

■Dreaming

以前は「Dreamtime」などと呼ばれていた。伝統的なアボリジナルの人々が、自分達の祖先の過去と現在に関係する方法を表すのに、DreamingやDreamtimeは不適切な言葉である。一つの言葉よりもむしろ、それに含まれる複雑な概念の本質の中にある何かを伝えるエッセイ全体を読む方がいいだろう。『Ancestral Connections』(H. Morphy, 1991)や、『Knowledge and Secrecy in an Aboriginal Religion』(I. Keen, 1994) を読めば、この事について学ぶことができます。

A 〜 Z

-E-
■Emeba

「Shaky Voice(喉を震わせた声)」で歌われるのが特徴的な、Groote Eylandtのクラン・ソング(Enindilyaugwa語)。

A 〜 Z

-G-
■Gadayka

数有るゴムの樹の一つ、ここでは北部に生息するストリンギー・バーク(学名Eucalyptus Tetradonta)を指し、このストリンギー・バークの木の幹は、yidaki製作に広く使われています(ヨォルング語)。

■Garma

一連の公の儀式(浄め、葬式、あるいはイニシエーションの儀式の公然な側面)形式を表すヨォルングの言葉。

■Gudjika

ブーメラン・クラップスティックだけが歌の伴奏をする歌のカテゴリーを表すヨォルングの言葉。

A 〜 Z

-I-
■Ironwood

熱帯の硬い樹木(学名Erythrophleum chlorostachys)で、この木から作られる様々な楽器、特にクラップスティックは、高い共鳴性を持っている。

A 〜 Z

-K-
■Kun-borrk

(特に古い文章ではGunborgと綴られる事が多い。「2-3. 地域による伝統音楽のスタイル」をご覧ください。)

A 〜 Z

-M-
■Madayin'

(言葉、歌、儀式、もの、場所の)神聖さ、秘密性を意味するヨォルングの言葉。「Maraian」もしくは似たようなスペルのものもよく見られる。

■Malgarri

中央アーネム・ランドのBlyth Riverの西で演奏されるおおやけの儀式の一つのスタイル。ディジュリドゥの名称としても使われる(ヨォルング語)。

■Makassan (macassan)

インドネシアのスラウェシ島南西地域の人々。特に、Ujung Pandangという地名でも知られるMacassarから、Top Endのアボリジナルの人々と交易をするために数世紀に渡って、オーストラリアを訪れていた。  >>詳しく読む『6. マカッサン / インドネシア・スラウェシ島の漁民』

■Manikay

ヨォルングの言葉で「song(歌)」、特にクラップスティックとディジュリドゥの伴奏を伴った、おおやけのクラン・ソングを指す。古い文章では「manigai」と綴られることもある。

■Marradjirri

中央、東アーネム・ランドの公の交換と外交の儀式(ヨォルング語)。

■Moiety

逐語的には「半分」を意味する人類学の専門用語。宇宙の全てのものは、社会的、宗教的に半分それぞれに属する(陰陽の観念や、同様の二分する観念とは全く違う)。全ての人々、クラン、祖先の人々、(リズムや、クラップスティックのパターンを含む)歌、デザイン、もの、現象、植物、動物は、この二つの半族のどちらか一つに属している。この半族は、異種族間結婚の単位でもある。東アーネム・ランドでは、この半族は、DhuwaとYirritjaと名付けられ、その他の地域では下記の図の名称で呼ばれている。

東アーネム・ランド(Yolngu) Dhuwa Yirritja
西 + 中央アーネム・ランド(Bining) Duwa Yirridjdja
中央アーネム・ランド(Anbarra) Jowanga Yirrichinga
南東アーネム・ランド(Nunggubuyu) Mandhayung Mandirritja
Groote Eylandt(Wanindilyaugwa) East Wind Side
(Mamarika)
West Wind Side
(Barra)

■Mouth Sounds

ソングマンがディジュリドゥ奏者に、演奏して欲しいリズムを伝える時に使う音声手段を表した、民族音楽学者Alice Moyleが名付けた言葉。ディジュリドゥ奏者がリズムを覚えたり、生徒のディジュリドゥ奏者にリズムを教える時にも使われる。マウス・サウンドは、楽器を通して話される事はない。  >>詳しく読む

A 〜 Z

-N-
■Ngaara

クランの独自性と法に焦点を合わせたヨォルングの儀式(ヨォルング語)

A 〜 Z

-O-
■Overtone(Overblow、Toot、Hootなどとも呼ばれる)

よりタイトな唇の緊張で鳴らされるトランペットのような音で、Bタイプのディジュリドゥの伴奏スタイルに特徴的な音である。

A 〜 Z

-P-
■Proximal

演奏者に最も近いディジュリドゥの端。通常、「マウスピース」と呼ばれる事が多い。反対語はdistal。

■Puller

昔、ディジュリドゥ奏者という意味で使われていた(Top Endの)アボリジナル英語。

A 〜 Z

-S-
■Songline

「ソングライン」という言葉は、祖先の神々が古代に大地を旅した時の、彼等の活動を詳しく語る一続きの歌/ストーリーを表現して、作家Bruce Chatwinが使った言葉で、後にそれが普及した。昔は民俗学者らが「ソングサイクル」という言葉を使っていたが、現在ではこのような「ドリーミング・トラック」がオーストラリア全土にわたって途切れずにある道すじだという誤った概念を作り出すニュー・エージ運動(と専門的な社会経済規範)によって誇張され、宣伝されている。このような幾分失礼な考えは、オーストラリア国内におけるアボリジナル文化の多様性と、個人のアイデンテイを主張し、保持する必要性を考慮していない。

■Sticks
上記、clapsticks を参照

A 〜 Z

-T-
■Top End

通常ノーザン・テリトリー州の北1/3を指す。キンバリーや、クイーンズランド州(Carpentaria湾とCape York)の熱帯地域に関してこの言葉が使われることがある。

■Totem

(どこか不適切な言葉なのだが)オーストラリアでは、クランに関係している動植物(「トーテム上の種族」と呼ばれることがある)を含んだ、人々、祖先の人々、土地(クランの所有地)のつながりを指す言葉として使われる。

A 〜 Z

-U-
■UVT (Unaccompanied Vocal Termination)

Bunggulの演奏の際に、ディジュリドゥとクラップスティックが演奏を終えた後に、ソングマンが歌う、あるいは話す、最後の叙唱部(オペラなどでの語るような歌い方)。

A 〜 Z

-W-
■Wangga

(特に、昔の記述ではWonggaと綴られることが多い。「2-3. 地域による伝統音楽のスタイル」をご覧ください。)

■Wan'tjurr

中央、東アーネム・ランドの「浄めの儀式」の一つ(ヨォルング語)。

A 〜 Z

-Y-
■Yidaki (Yirdaki)

東アーネム・ランドのヨォルングの人々が伝統的に作る、特有なディジュリドゥ。楽器の地域的なスタイルに関しては、数多くの形態学的なバリエーションが存在する。そのような楽器は、Djalupiny、Mandupul、Dhambilpil(すべてヨォルング語)など、特有の名称で呼ばれている。

■Yirritja

全ての生命、物質、現象などが属する二つの半族の一つで、東アーネム・ランドで使われる名称。

■Yolngu

東アーネム・ランドの伝統的なアボリジナルの人々。Yolnguという言葉は、逐語的には「人々」を意味し、共通の文化圏の人々と、そこに住む人々が話す言語の両方を表している(ヨォルング語)。

■Yuta

「新しい」を意味するヨォルング語。


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