60年代から最もラジカルに音楽的趣向が変化した東アーネム・ランドNumbulwarのG〜Aというハイ・ピッチのディジュリドゥによるスピーディーな演奏が独特な一枚です。
アーネム・ランドの東海岸Walker Riverが注ぎこむBlue Mad湾に面した地域Numbulwar(東アーネム・ランド)のNhundhirribalaクラン・ソングを75曲収録しています。最近のこの地域の録音は少なく、現在進行形で進んでいるこの地域独特のディジュリドゥの演奏スタイルとサウンド、そしてその楽曲を聞くことができます。 ディジュリドゥはYadu Numamurdirdi。Gくらいのハイ・ピッチのディジュリドゥによる滑らかでスピーディーな演奏がすさまじい。この録音ではディジュリドゥの音が少し小さいので、細かい舌の動きは聞き取れないのが残念だが、非常に繊細でスピィーディな舌の動きをしている。トラック21あたりから後半にかけてはディジュリドゥの音量もあがり、音の細部もつかみやすくなります。 '60年代では、北東アーネム・ランドのヨォルング的な音楽的感覚に一部中央アーネム・ランドのGUNBORGの影響を感じさせるような歌と、Groote Eylandtのディジュリドゥの演奏スタイルと相互に影響しあっているという印象だったのが、近年のこの地域の歌とディジュリドゥの演奏はより独自性を強めたスタイルへと変化している。 一番の特徴は高いピッチのディジュリドゥが好まれるという点で、その他にも短いリズミックなトゥーツがあまり多用されず、逆により合図もしくはブレイク的な長めのトゥーツが使われるようになっているいるなど、この50年ですさまじい音楽的指向性の変化がみられる。またMungayanaはディジュリドゥ奏者からソングマンに転向しているというのもバックグラウンドに何かを感じさせる。 収録曲の中では、特に21-69曲のマカサン(ナマコの交易のために北東アーネム・ランドの沿岸部に船で来ていたインドネシアのスラウェシ島のMacassarの人々の総称)の歌が秀逸。全曲とも同じはじまり方なので単調のように感じるが、それぞれの曲で様々なリズムを演奏している。このシリーズの中でもかなりコアなレコーディングと言える。 Numbulwar周辺地域の録音を含んだ音源 ・『A CHANGING CULTURE』(Cassette 1975-78/1991 : Social Science Press) 1曲収録 ・『ABORIGINAL MUSIC FROM AUSTRALIA -Unesco Collection Musical Sources』(LP/CD 1959-69 : PHILIPS/UNESCO) トラック7 ・『ABORIGINAL SOUND INSTRUMENTS』(CD 1963-68/1996 : AIATSIS) 数曲収録 ・『SONGS FROM THE NORTHERN TERRITORY 2』(CD 1961-63/1996 : AIATSIS) 多数収録しておりかなり秀逸 ・『SONGS FROM THE NORTHERN TERRITORY 3』(CD 1961-63/1996 : AIATSIS) トラック5のみ ・『SONGS FROM THE NORTHERN TERRITORY 5』(CD 1961-63/1996 : AIATSIS) 2曲収録(ディジュリドゥなし) |
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