中央砂漠地域の音楽だけを収録した珍しい7" EPが本の付録としてついている。廃盤。
■ライナー各曲の翻訳と解説
これは同名のタイトルで発売された書籍『Alyawarra Music-Songs and society in a central Australian community』(Book w/ 7" disc 1982 : AIAS)に付属している7インチ・レコードです。この書籍では、A4サイズ271Pに渡って、歌を譜面化したものや、白黒写真、家系図や地図などとともに、この中央砂漠地域の音楽を中心にその文化、社会構造、儀式などについての研究が紹介されている。
Alyawarraの人々は同名の言語を話し、ノーザン・テリトリー州南部の町アリス・スプリングから北東200kmに位置する17,000平方kmの地域を所有している。このAlyawarraの人々の土地は、Agharringaという名前で知られる広大な地域の一部である。Alyawarraの人々の多くは、Murray Downs、MacDonald Downsなどのこの地域内の牛の牧場や300km東のLake Nash居住地に住んでいる。
収録されているそれぞれの曲は、書籍の中でその歌詞の全文が紹介され、どのような状況でその歌が歌われたのかを写真付きで詳しく説明してあり、わかりやすい。下記は本の中で書かれている内容の簡単な要約に加えて、収録されている音の聴感上の感想などが紹介されています。
■ライナー各曲の翻訳と解説
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
SIDE A :1. Anthipa series|2. Arrtja|3. Arrtja|4. Awiya series|5. Ituminya dancing
SIDE B :6. Awulya Antaringinya|7. Awulya Antaringinya|8. Awulya Atithirra|9. Awulya Atithirra
SIDE A :
1.Anthipa series (1:00)
「Anthipa」とは、ここではイニシエーション(通過儀礼)に関連した夜間に行われる儀式の後に、全ての女性と少女達の踊りに見られる独特な動きのことで、女性の踊り、ドリーミング、そして歌そのものを表す言葉である。ここでは、地面をトントンと打ち付ける音を伴奏に大多数の男性の歌声に混じって、高い叫び声が断続的に聞かれる。本のP91にその歌詞がが紹介されています。57節からなるソング・サイクルの一部。
2.Arrtja; Inner Song (0:43)
男性のイニシエーションの儀式「Apulha」のために歌われる歌で、「Inner Song」は特定の順序にしたがって歌われるソング・サイクルにある歌ではない。「Outer Song」と「Inner Song」は、同じメロディーを持ち、2種類に分類されている同一のリズムで歌われる。本のP109で紹介されている歌詞によれば、長耳バンディクート(ネズミのような外観をした雑食性の動物)のドリーミングである。歌の演奏形態は、トラック1と同様。
3.Arrtja; Outer Song (0:43)
この「Outer Song」というのは、本の解説によればAlyawarraの外部から入ってきた歌という意味のようだ。主に西と南西にそれぞれ位置するKaititija、Anmatijirra、Arandaの人々の歌がAlyawarraに参入し、それが彼等の歌のレパートリーの一部になったと考えられている。この事からAlyawarraの人々はドリーミングと呼ばれる太古の時代に、自分達の土地Alyawarraの西と南西部に非常に強い結びつきがあったのだろうと思われる。
リード・シンガーに複数の男性シンガー達が、ユニゾンして歌い、歌のメロディー部分が下降する部分ではハーモニーになるように非常に低い声で歌っている声が聞かれるのが特徴的で、トラック1-2で聞かれるようなダンサーのものと思われる高いかけ声は聞かれない。
4. Awiya series (0:48)
「数人の少年達が、まるで自分達の背中に空洞ができているかのように極端にまっすぐな姿勢で歩いている」という歌。「Awiya」とは少年という意味で、この「Awiya」ソング・シリーズは男性のイニシエーションの儀式「Apulha」の行われる場所に女性と子供がやってくるまでの間に歌われる。
地面をクラップスティックで打つ音をバックに、非常にハーモニックに力強く歌われているが、歌のメロディーの下降部分では非常に低い声にまで下がり、消え入るように歌われている。
5. Ituminya dancing (0:17)
非常に短いトラックで、歌の背景では葉っぱのついた棒「Ituminya Pole」をガサガサと降る音と女性達がクークーと叫んでいるのが聞かれる。Ariyna、Kurantja、Ngkwarlalanimaの土地出身の男達のための歌。
SIDE B :
6.Awulya Antaringinya (0:36)
「Awulya」とは、Alyawarraの女性の儀式に対する言葉である。ウサギの皮でできた美しいヒモを身にまとった二人の女性が、そのヒモがどれだけ滑らかかという事を見せるために両手でそのヒモを擦りあわせながら踊っている。P66では、その様子を写した写真と歌詞が掲載されている。
7.Awulya Antaringinya (0:47)
Ankarra出身の女性達が、自分達の体にボディペイントを施しているという歌詞。複数の女性ボーカルによる歌。
8.Awulya Atithirra (0:35)
泉では、セキセイインコが地面を急いで走っているという歌詞。インコ達は、Akwiytaという所で、地面に落ちている種をさがしている。Utirlpaからやってきた。複数の女性ボーカルによる歌。
9.Awulya Atithirra (0 :53)
女性達は鳥達が飛び立つ時、鳥を探してゴムの木の方を眺めている。それ以外には、熱によるモヤだけが見えるという歌詞。B面のトラック6-9の女性達による歌は、全て同じようなスタイルで歌われている。
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