ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -Walking with Spirits フェス再び 前編2-

【Mago職人Frankie Laneの気迫!】

修理されるランクル
検査の結果が出るのを固唾を呑んで見守るメンバー・・。と思ったらノンくんはおっさんのズボンからはみでた尻の写真を撮っていた!こらっ!
修理屋に戻ってみると、必要な機材がちょうど届いたところだった。これから検査にかかるのだという。

僕たちはその様子を固唾を呑んで見守った。

そして結果は・・・「All Right!! エンジンにはまったく問題なし!」

やったー!これでなんの心配もなくフェスティバルへ向かうことができる!!

次の日の朝、僕たちは意気揚々とフェスティバル会場があるWugularrコミュニティに向けて出発した。スチュアート・ハイウェイを南に下ると懐かしいあの看板が立つ交差点がある。

Beswick/Wugularr Didjeridu Center Home of Didjeridu Master David Branasi

この看板だけは何度みてもテンションがあがる。この交差点を曲がってすこし走れば、もうそこはアーネム・ランドなのだから・・。僕たちは興奮で高鳴る気持ちを抑えながら、両側に広がる低く乾いたブッシュの森の中を一気に走り抜けていった。

比較的平坦で単調な道を走り続けると、不意にアップダウンが現れる場所がある。その場所を過ぎれば目的地はもう目と鼻の先だ。乾いたブッシュの森から、瑞々しい緑の葉をたたえた木が視界に現れ、小川に架かった小さな橋を渡ればそこがWugularrコミュニティ。遠くにポツポツと家や人の影が見える。

僕たちは早速フェスティバルの主催者であるTom E. Louis 通称Tommyの家を訪ねることにした。Tommyは海外で舞台演出を学び、自ら俳優やミュージシャンとして活躍するWugularrコミュニティのヒーロー的存在。コミュニティ内のツアーの手配やイベントの運営などもほとんど彼が取り仕切っている。実際にWalking with Spiritsフェスティバルや、キャサリンの町で乾季のみ開催される「Corroboree」と銘打たれたアボリジナルの歌と踊りのイベント、そして年1回行われるキャサリン・フェスティバルなどもすべて彼がオーガナイズしているのだ。

彼の家を訪れてみるとフェスティバルの準備で大忙し。それでも去年の約束を守り、またここに戻ってきた僕たちを歓迎してくれた。

彼に一通りの挨拶を済ませたあと、次に向かったのはWugularr在住の数少ないMago(ディジュリドゥ)職人であるFrankie Laneの家。彼は覚えていてくれるだろうか・・。

家を訪ねてみると、そんな僕たちの心配をよそに満面の笑みで歓迎してくれた。

彼はWugularrでは本当に数少ないMaro職人だ。キャサリンの町で見かけるものはほとんどがFrankieか、またはもうひとりのMago職人であり重要なソングマンでもあるMicky Hallの作品といっても過言ではない。

Flankie Lane & Gori
写真がFrankie Lane。とても気さくで楽しいおじさんだ。酒を飲むとちょっと問題ありではあるけど・・
© Frankie (Tango) Lane 2005
この写真の使用は写真撮影時に直接Frankie自身から許可を頂きました。アボリジナルの肖像権を守るためにも無断転載禁止を遵守して下さい。

僕たちは前回の旅でWugularrを訪れた際、FrankieがカットしたものにMickyがペイントするという共同制作という形でMagoを何本か作ってもらっていた。その作品はEarth Tubeのコレクションのページで見ることができる。

Earth Tube Collection Mago
【Frankie Lane】D-D#/G-・132cm/3.3kg・3.2-3.5cm/6.5-7.2cm
Sold
Frankie LaneのMago製作をレポートした時に作ったMago。吹き易いすばらしい名作。

FrankieにはNorman Laneという兄弟がいて、彼もすばらしいMago職人らしいのだが、いかんせん酒癖が悪く、思う存分飲むことのできるキャサリンの町へ出て行ったままなかなか帰ってこないらしい。残念なことだ。

握手したり抱き合ったりしながら再会を喜んだあと、彼は「俺の作業場を見てくれ!」と僕たちを家の横の建物へと案内してくれた。去年訪れたときにはなにもなかったその場所に、たくさん転がるディジュリドゥの原木。まだ表皮のついたものから、すでに形を整えたものまでさまざま。その状況から去年より本気でディジュリドゥを製作しているといことがヒシヒシと伝わってきた。これは楽しみだ!!

庭にさんらんするMago

作業場に転がるMagoの山。Frankieの気迫が感じられた。

「俺はこのフェスティバルのためにMagoをたくさん作ったんだ!」 と自信満々という感じで話すFrankie。

「えっ!どこにあんの?見せて!!」 と僕らはガッチリ食いついた。すると・・。

「ああ、もう全部会場に持っていってしまったよ。」

「!!!!」

この一言に、僕たちは全速力で会場であるBeswick Fallへ向かったのだった。