ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -Gamraのディープな楽しみ方編 5-

【Gupapuyunguのキャンプに突撃!!】

Garmaフェスティバルの参加コースにはいくつかある。そのカテゴリーの中でも「Yidaki Master Class」は独自のスケジュールが組まれていて、イダキ・マスターからのレッスンを受けたり、イダキのための木を切りに森に入ったりと朝から夕方まで結構忙しい。今回僕達は自分達でスケジュールを決められる「Key Forum」という学生や研究者などのために組まれたカテゴリーに参加していた。

僕たちは日本を出発する前から、そのKey Forumの空き時間に「Gupapuyunguの人たちのキャンプを訪れる」ことを計画していた。僕は去年彼らを訪れており「誰か僕のことを覚えてくれているだろう」というわずかな希望を勇気に変えてGORIくん、ノン君、まゆみ、僕の4人はブッシュの中を彼らのキャンプに向かった。心なしかみんなの顔にちょっとした緊張感が漂っていた。

彼らのキャンプはメインの会場から少し離れたブッシュの中にある。去年彼らが話していたところによると、そのキャンプが張られている一角はGupapuyunguの人々の土地なのだそうだ。アボリジナルの人たちの土地に対する意識はとても複雑で僕にはまだ理解できていない。しかしその一角がGupapuyunguの人たちにとっても重要な土地であることは間違いなさそうだ。

途中、ブッシュですれ違った人にさわやかに挨拶を交わすものの、彼らの対応には「誰だこいつら?」的な冷たい感じ。「しまった!覚えられてないのかも!」という後悔も先に立たず、すでにキャンプは目と鼻の先。すでに規則的なクラップスティックの音にあわせて歌うソングマンの声、そして低いドローンに高いトゥーツを組み合わせるGupapuyunguクラン独特のディジュリドゥの音が響いていた。さらに近づいていくと、ダンサー達が本番さながらの迫力のあるダンスを踊っているのが見えた。

「あっちゃー、タイミング悪すぎたかも・・」

とさらに落ち込んでみるものの、ここまできたら引き返すことはできない!!意を決して彼らのもとに飛び出していった。

「あのう・・ここで見させてもらってもいいですか??」

場に流れる一瞬の沈黙・・。空気が重い。やっぱりダメか・・と思ったその瞬間、

「おおっ、兄弟!もちろんOKだよ。こっちに来い!!」

彼らは予想に反してめちゃくちゃ快く迎えいれてくれたのだった。しかもサプライズはそれだけではなかった。僕達が「イダキを吹けるよ」というとそれからテントの中まで迎え入れてもらい、そこで特別なレッスンがはじまったのだ!!輪になるように座った彼らの前で僕たちがBush Nameで自己紹介すると、その場にいた人たちが「おお?!!」という感嘆の声と拍手で答えてくれた。そしてはじまったレッスンはもちろんGupapuyunguのスタイル!まずは彼らがマウスサウンドで曲の展開を示してくれる。そして次に僕達が吹きはじめるとそれに合わせてソングマンが唄ってくれた。間違うと「違う違う!ここはこう吹くんだっ」といって再度マウスサウンドで解説してくれる。フェスティバルで彼らの出番が近づき準備が始まるまでの短い時間だったのだが、これは本当に貴重な体験だった。こういう出会いや経験ができるのがGarmaの楽しみのひとつだ。

僕達が体験したGupapuyunguに特有の演奏スタイルは下記CDで聞くことができる。このように地域や言語によって異なる演奏スタイルを聞き比べるのもYidakiの楽しみのひとつだと思う。Earth Tubeのディスコグラフィーを参照に、ぜひ聞き比べてみてほしい。

CDジャケット Songs from the Northern Territory 4

-Northeastern Arnhem Land-
CD / Alice M. Moyle(Collector) / トラック1-4(Milingimbi, 1962-63)

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