ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -Gamraのディープな楽しみ方編 6-

【当たって砕けた!】

Garma会場をブラブラと歩いていると、Yidaki Headsにとってはとんでもない人たちに普通に出会うことができる。言わずと知れたイダキマスターDjalu Gurruwiwiはもちろん、元祖Yothu Yindiのイダキ奏者であるMilkayやボーカルであるMandawuy Yunupingu、Northern Land Councilのチェアマンであり(現在は引退している)、いくつかの貴重な音源で透き通るような唄声を披露し、「Comtemporary Master Series Vol.1 GOBULU」のソングマン Galarrwuy Yunupingu。

NumbulwarのダンスグループRed Flag Dancersに所属するディジュリドゥ奏者の中でも明らかに他の奏者とは異なる演奏技術を持っているアーネス(つづり不明)や、「Songs from the Northern Territory Vol.3」の6曲目に収録されている伝説のLambirlbirl奏者であり、「Comtemporary Master Series Vol.5 Nundhirribala」では素晴らしい唄を披露している偉大なソングマン、Mungayanaなどなど・・名前を挙げ始めたらきりがない! アボリジナル界を代表するスーパースターが揃い踏みのこの場所は、言うならばYidaki HeadsにとってのMTVアワード会場みたいなものだ。

そしてその日、僕達はこれまたすごい人の近くにいた。その人の名前はDjambawa Marawili。Yirrkala のアートセンターであるBuku Larrnggay Mulkaのチェアマンであり、Madarrpaクランのエルダーである。そして、樹皮画のペインターでもあり、うねるような、這うような曲線の重なりが独特の味を持つアーティストとして世界的に有名だ。また、2004年のGarmaフェスティバルで開催されたイダキ・フォーラムで、Yirritjaの神聖なYidakiを吹くことを許されていた人でもある。その人がすぐそばにいる!!ここでうまく話しが進めばあわよくば僕達の憧れの地、GanGanへと導かれるキッカケになるかもしれない。これはなにかアクションを起こさなければ!!

その気持ちに押され、気が付けばまったく面識がないにもかかわらず、すでに彼に声を掛けてしまっていた。

「こんにちは!去年のYidaki フォーラムに参加させてもらった者です!」

「・・・。(知ってるわけがない)」

「今年はMadarrpa言語グループは踊るんですか??」

「Yakka・・(踊らないよ)。」

「去年はすごかったですね!」

「Thank you」

「いやー、暑いですね?(すでに話題がなくなった)」

「Yo・・(そうだね)。」

「・・・。」

まさにコミュニケーション・ブレイクダウン!!隣にいたGORI君も、このどうしようもないやりとりに「やめときゃいいのに・・」という顔をしている。どないしょー・・もう収集つかへん・・。

次の瞬間、僕は軽く挨拶を交わしたあとスルスルと彼のもとから離れていた。さすがクラン・リーダー、長老、偉い人。口数少なすぎで会話の糸口まったくつかめず。夢のGanGanへの道は遥かかなたに遠のいたのだった・・。

実はこの話には後日談がある。ある日アートセンターから電話がかかってきて「君たちの車を買いたいって言ってる人がいるから会ってくれないか?」と言われた。相手が誰かと尋ねてみれば、なんと!Djambawa Marawiliその人だったのだ!!結局、車の話はキャンセルになり、僕は直接彼と会話することはなかったのだが、対応したGORI君に聞いてみるとそのときの彼はとてもフレンドリーだったそうな・・。