現代音楽の中に西部アーネム・ランドのアボリジナルのディジュリドゥ奏者を入れて演奏するという初の試みを収録した記録的価値の高い作品。前衛的なアプローチで挑んだ意欲作。
このレコードに収録されている曲は全て作曲家が曲を書き、その楽譜に従ってそれぞれの楽器が演奏されている。その際にディジュリドゥ奏者George Winungujにどういった指事がされていたかは不明だが、Georgeが楽譜を読めなかった確立は高いだろう。おそらく、演奏のスタートと止めるタイミングだけが指事されているようで、生真面目に前衛的なアプローチに挑む4人の管楽器奏者をよそに、Georgeは伝統的な「Lidaro-/Ditamor」といったマウスサウンドで自分のスタイルを変える事なくのびのびとと演奏している。
内容としては非常に現代音楽的で実験的。ディジュリドゥは曲の頭と曲間にほんの短いソロがあり、そのパート以外は4つの管楽器にうもれて聞き取りにくいのが残念だ。しかし、アボリジナルの伝統楽器ディジュリドゥが、アボリジナルの演奏者によって西洋音楽の中で演奏されるという初の試みがなされたという歴史的価値の高い音源と言える。
また、アーネム・ランド北西部の「Goulburn島」のディジュリドゥ奏者が、パフォーマンスのためとはいえ、伝統曲の中では決して使われる事のないトゥーツ(ホーン/オーバートーン)やコールを巧みに操りながら、まるで現代のイダキ・マスターDjalu'
Gurruwiwiのようなパワフルな演奏を披露していて驚かされる。
ライナーには、当時の白人の側から分析したディジュリドゥの構造、演奏方法なども紹介されていて興味深い。