林 靖典 ポートレート 林 靖典 | ヨォルング語研究者・イダキ奏者
ゴーブ裁判 -アボリジナル土地所有権問題-

2. バランダ化しうるアボリジナル文化

採掘会社であるNabalco Alan Pty Limitedは北東Arnhem Landのアボリジナルの土地を搾取し、精神的に傷を負わせただけでなく、彼らの伝統文化をも侵食していったようです。1970年、Yirrkala Film Project(※1.)の中の一つのプロジェクトが開始されました。ありのままのNortheast Arnhem Landの人達の様子を撮影しようという試みで、今回取り上げるものは採掘会社プロジェクトが始まったことに起因する、Yolnguの人々の感傷に焦点を当てています。

1970年、Nhulunbuyにおいて数々の言語グループリーダーが集った村協議会が行われ、Yolnguにもたらされているバランダ文化の衝撃と影響がテーマとして討論されました。そのYirrkala Film Projectの中で、上にも登場したGumatjのリーダーであるMungarrawuy YunupinguがどのようにYolnguが独自の伝統文化を失っているのかを説明します。

「Nabalco採掘会社はYirrkala アボリジナルの若いYolngu達に採掘現場で働く数多くの雇用をもたらしている。採掘現場キャンプでは数多くの悪がある。それらはギャンブルやアルコールだ。若者は新しいRom(法律)であるバランダ文化に加護を受けてしまっている。エルダー達は若者を自分たちの独自の伝統文化へ引き戻そうとするが、彼らは耳を傾けない。私たちは彼ら若者を伝統文化に引き戻したい、私たちのRomへ。しかし、若者は私たちを避け続けているのである。エルダーと若いYolnguの間に生まれた溝、これこそが私たちが伝統文化を将来的に喪失してしまうところである。」

アルコール問題に関して、他の言語グループのリーダー達がそのFilm Projectの中で状況を厭う。村協議会の議長であるRoy Dadaynga Marikaは言います。

「採掘現場で働いているたくさんの若者Yolngu達が現場から酔っ払ってミッションに帰ってくる。彼らは自分の家族、嫁、子ども等を不安にする。彼らはお酒の飲み方を知らないのだ。さらに若者はアルコールをミッションに持って帰ってくる。」

ManggaliliのリーダーであるNarritjin MaymuruとDjapuのリーダーであるGiyarinの言葉。

「ボトル(ビール)はMawuyである。Mawuyとは人間の理性を失わせるもの。若者はボトルを自分たちの住む場所へ持って帰り、ミッション内で酔っ払う。ギャンブルもMawuyだ。」

-Narritjin Maymuru-

「アルコールはYolngu文化の新しいMawuyとなった。若者は採掘会社へ働きに行き、ボトルを家に持って帰ってくる。」

-Giyarin-


以上の資源採掘問題とMawuyによる影響はアボリジナル の伝統生活やミッションに大きな悪影響を与えていたのは異論の余地はありません。この問題に関しては視点の異なる人それぞれで意見の分かれるところであると思います。自分の考える中心をどの場所に置くかによって、これらの問題はいろんな意味を持つものと思います。しかしながら、本当につい最近までアボリジナルの道徳観や土地所有権が後からやってきたバランダ社会によって無視され冒涜され続けていたことは事実です。いろんな立場から異なった意見があると思いますが、オーストラリアの土地や文化に関することを考えたり、議論する際、このことが意見の根底にあることが大切であり、それが彼らアボリジナルへの敬意であり、礼儀であると思います。みんなでいろいろ話し合って、熱くなれたらと思います。

【林 靖典 2005】

Copyright of this Article : 2005 Yasunori Hayashi

この林 靖典の文章は、その一部であっても権利者の許可なく使用することはできません。またこのページに使われている「樹皮画嘆願書」の写真はオーストラリアの北東アーネム・ランドに住むYolnguの人達のものであり、この論文はYolnguをサポートしていると判断され写真の使用許可をいただいています。無断転載は絶対にしないよう御協力下さい。

参考文献

●Commonwealth online, Yirrkala petitions 1963

●Galarrwuy Yunupingu (1997) ‘Our Land is Our Life’

University of Queensland Press

●Galarrwuy Yunupingu (2002) ‘Galarrwuy Yunupingu talks land rights.’

ABC Darwin Thursday, 12 September

●‘Supreme Court of Northern Territory, Milirrpum v. Nabalco Pty. Ltd. and The Commonwealth of Australia’ (1971)

Reported for the Federal Law Reports by A. J. Leslie, LL. B, The Law Book Company Limited, Sydney, Melbourne, Brisbane

●The Yirrkala Film Project (1996) ‘Pain for This Land’ Film Australia, NSW

●Trudgen. R (2000) ‘Why Warriors Lie Down and Die’

Aboriginal Resource and Development Services Inc, Northern Territory


【注釈】
※1. Yirrkala Film Project
Yirrkala Film Projectは20巻から成るビデオ・シリーズで、今後Earth TubeのMovieページで入手可能になります。>>戻る