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GOYULAN -The Morning Star
GOYULAN -The Morning Star
NO AIAS-18
Artist/Collecter George Ganjupala(Didjeridu Player)
Media Type Cassette
Area 中央アーネム・ランド
Recorded Year 1978年
Label AIATSIS
Total Time
Price 廃盤
Related Works なし
SIDE A :
1.Jiwurl(Seaweed Flower or Sea Urchin)
2.Larreija(Sawfish)
3.Parrait-parrait(Fish of Open Sea)
4.Bardainy(Hibiscus Shrub and Rope)
5.Lipa-lipa(Canoe)
6.Gurredi(Small Sea Bord)
7.Garrarla(Ibis)
8.Manikurdorrk(Brolga)
10.Mibugorla(Sweet Grass Stalk)
11.Yukurda(Yam Species)
13.Garlpi(Spear)
14.Burnpa(Butterfly)
15.Churri-churdo(Bird Species)

SIDE B :
17.Barranyji(Sugar Glider)
18.Gulotok(Diamond Dove)
19.Gunjonga(Stringy Bark Tree)
20.Jok(Ritual Font)
21.Bol(fire)
22.Goyulan(Morning Star)
23.Wurrurlul(Blowfly)
24.Wangarra(Spirit Man)
25.Nanyja(Pelican)
26.Damalkurra(White-breasted Sea Eagle)
27.Juno(Red Ochre)
北部中央アーネム・ランドManingridaの「明けの明星」のソング・シリーズ。ディジュリドゥは低いディープなサウンドのものが使われています。

■ライナーの翻訳
■MORNING STAR : 明けの明星
■GOYULAN(Morning Star)の歌詞

Songs from The Northern Territory』シリーズをリリースしているアボリジナルとTorres海峡の島民の文化財団AIATSISからのカセットで発売されている北部中央オーストラリアのアボリジナルの'78年と'82の年録音です。カセットのライナーにも詳しい内容解説がされているが、同名でAIATSISから販売された本があり、その本に詳しい内容が書かれているようだ。

またライナーでは、基本的な「Clan」や、「Totem」、「Rom」、そしてアボリジナルにとって非常に重要な「Goyulan(Morning Star)」についてのわかりやすい解説など、アボリジナル文化の根底をなす言葉の説明からこのカセットのタイトルであるMorning Starのディープな解説まで濃厚なライナーになっている。下記に詳細が載っているので、是非参照してもらいたい。曖昧にとらえていたトーテムやドリーミングなどそれぞれの言葉の深い意味合いと、その概念を理解することができる。特に「人々と大地と神々」の密接な霊的つながりについての記述は興味深い。

北部中央アーネム・ランドのManingridaの人々による神聖なソング・シリーズ「GOYULAN : Morning Star」の音源で、写真に移っているのは、このソング・シリーズの儀式で使われるモーニング・スター・ポールを上から写したものです。花びらのように見えるのは鳥の羽で、これは「モーニング・スターの瞳」を表している。

Maningridaから少し離れたアウトステーョンに住むDjinanクランのリサーチをおこなった国立民族学博物館の松山利夫教授の著作『ユーカリの森に生きる』(NHKブックス)では、モーニング・スターの儀式について詳しく紹介されており、日本語で読めるアボリジナルの文献の中でも最もディープな内容の一つです。是非一読していただきたい。また大阪、吹田市の万博記念公園内にある国立民族学博物館のビデオ・ライブラリーでは、前述の松山教授の研究チームが撮影してきたモーニング・スターの儀式のビデオを見ることができます。必見です!!

カセットには曲毎に英語とアボリジナルの言葉の両方でタイトルのナレーションが入り、わかりやすいが、ディジュリドゥの音は低い上にすこし音量が小さいのが残念だ。スタイル的には北東アーネム・ランドの影響が強いがリズミックな演奏ではなく、1秒弱の長いトゥーツを多用する中央アーネム・ランドの演奏スタイルです。4曲目のHibisucus Shrub & Ropeはトゥーツの使い方が曲中でもより明確である。

    Songman : Johnny Mundrugmundrug and Jacky Riala
    Didjeridu : George Ganjupala

以下、はカセットのジャケットに掲載されているライナーの翻訳です。

■ライナーの翻訳
伝統的なオーストラリアのアボリジナルの音楽は、楽器の伴奏を従えた歌であり、それらは口承によって作曲、演奏され、次世代へと受け継がれる。伝統的な歌というのは元来宗教的儀式の根幹をなすものだった、特に「Goyulan」などは現在でもそうである。アボリジナル達は、ダンスと神聖なアイテムの視覚的表現という組合せの中で歌うことを通じて、自らの重要な宗教的観念を表現している。

「Goyulan」は前述のような神聖な音楽であり、その意味は「Morning Star:夜明け前に東の空に見える金星」であり、そして約30もの歌からなるこのソング・シリーズの最も重要な歌のテーマでもある。その約30の歌はそれぞれ別々の歌で、その内の三つを名付けるとすれば、Brolga(豪州鶴)、Canoe(カヌー)、Sugar Glider(フクロモモンガ)のような歌で構成されており、そういったリンクした物事から、この広大なソング・シリーズがなりたっている。これら全ての歌はノーザン・テリトリー州の北部中央アーネム・ランドのAnbarra(BararaというDuaとYirritja両方を含む5つの言語グループからなる部族形態のようなグループの内の一つ)の人々の内のいくつかのクランの人々にとっての精神的財産になっている。

「Clan」とは、密接に関係したアボリジナルの人々の小さなグループを指し、彼等は父方の家系を通じてそのグループの一員であるとし、クランは土地の中のある地域を共有している。クランの人々は、精霊的存在の集合を共有していると信じている、またある意味それを所有していると考えている。そしてその精霊の活動というものが自分達の生命とその幸福に密接に関係していると信じているのである。こういった精霊のいくつかは、世界が今ある形になったといわれるドリーミングと呼ばれるはるか昔に、創造主として活動してきていると考えられている。

Anbarraの人々のクランの大地は、Maningridaコミュニティから約40km東にあるBlyth Riverの河口の両岸とその近辺にあり、現在ではManingridaにAnbarraの人々が多数住んでいる。何人かは彼等のクラン・ランドもしくはその近辺の小さなアウトステーション(アボリジナル居住区から遠く離れた辺境にアボリジナルの人々が集まって作っている集落、主にその部族やクランにとって重要な土地ホームランドにあることが多い)に住み、そこには子供達の教育や医療施設、車の修理施設、西洋式の食べ物の供給などへのアクセスがある。

アーネム・ランドのアボリジナルのクランに「Manikay」という名前で知られるクラン・ソングは、クランの精霊的存在や神様について歌われる。その精霊や神は、霊的本質だけではなく、動物や植物、こしらえられた物などの姿でも現れる。こういった神性のことを「Totem」と呼ばれることがある。歌は霊的本質をたたえる。そしてその霊的本質は、日々、植物や動物として現れ、その実クランの人々にとっては深い宗教的重要性を持つ。その霊的存在を見つめることで彼等を理解しているのだろう。

ドリーミングと呼ばれるはるか昔になされた神々の行動や放浪の旅により、クランの土地やそれをとりまく領域が、ある特定の形を持つようになったと言われている。だから、ある場所に存在する特定のビラボン(川が作る三日月湖)は、祖先のノコギリエイが作ったと考えられており、どこかの砂丘はまた他のスピリットによって作られた。ある特定の精霊は単にある特定のクランの土地にたくさん住んでいると考えられることもある。つまり、ドリームタイムと他の霊的存在、クランの土地、生きているクランの人々、生者と死者、歌とダンス、クランの文学と歌を形作る精霊の具体的な表現を通じてアーネム・ランドのアボリジナルの心の中で密接で濃厚な霊的関係が築き上げられた。

こういった「人々と大地と神々」の密接な霊的つながりの存在を考えれば、クラン・ソングを所有する人々の生活の中で、「Goyulan」のようなクラン・ソングが大きな幸福と深い悲しみの高い次元で歌われるということは、ごく当たりまえのことである。様々な儀式を通じて人々をそういった高い次元にもたらす。大人という身分を得るための前奏曲である「若者の割礼」、「亡くなったクランの人の葬式」、歌を所有する人々と遠く離れているが友好的な関係のクランの人々との間で行われる「Rom」と呼ばれる外交的な性質の儀式がその例である。Romと呼ばれる儀式については、Stephen A Wildによって書かれた本『Rom : An Aboriginal Ritual of Diplomacy』(AIATSIS 1986)で詳しく述べられている。クラン・ソングは儀式的な状況以外でも歌われる事がある。彼等はクラン・ソングを聞くのが大好きで、夕食の後にキャンプ・ファイヤーの周りで歌にあわせて踊りを踊る。

全ての関係のあるクランが「Goyulan」のようなソング・シリーズを共有しているのだが、性別にかかわらずにこの地域では、女性がおおやけの場で歌い手になることは決してなく、実際、すべての年齢層の中でもごく少数の男性だけが認められた歌い手になる。こういった歌い手というのはその道のスペシャリストである。まず最初に、シンガーは30程ある歌のテーマについての慣習的な歌詞と、メロディのフレーズを覚えなければいけない。そして、ジャズ・シンガーがするように慣習的にあるフレーズのコンビーネーションを短い曲構造の中で即興で歌いながら、かなり長い時間の間、人前でそれを歌うことができなければいけない。シンガーは他にも、それぞれの歌の主題を伴奏するためにシンガー自身がたたく一対の硬い木でできたクラップスティックによる継続的に変化するリズム・パターン習得し、そしてシンガーが指揮するディジュリドゥ奏者と協力し合わなければいけない。ディジュリドゥ奏者はシンガーに正確なドローン(持続低音)とプーというOvertone(上音・倍音)を供給する。最終的に、シンガーは、ダンサーのグループを指揮し、協力しあい、クラン・ソングに伴う儀式の全てのレパートリーについての知識を持っていないといけない。

1982年にCanberraで収録されたこの録音では二人のシンガーの歌が収録されている。Johnny Mundrugmudrugは年長のシンガーで1987年に亡くなった。彼は長年の間「Goyulan」を歌い続け、彼のクランの人々だけにおさまらずアーネム・ランドのたくさんのコミュニティの人々に尊敬されていた。もしこの録音をアーネム・ランドの人々、特にManingridaの地域の人々の前で聞かせようとするなら、現在すでに亡くなっている人の声を聞いても問題無いかどうかをまず最初に聞かなければいけない。二人目のシンガーはJacky Rialaで、Maningridaに住んでいる。ディジュリドゥ奏者はGeorge Ganjupalaである。

B面の27曲目に収録されているこの歌の最後のテーマは「Red Ochre(赤い顔料)」で、これのみ別で録音された。これは非常に重要な「Goyulan」ソングのテーマであるが、Canberraでの演奏の時は歌われなかった。「Red Ochre」は葬式の儀式の時によく歌われ、亡くなった人の骨は、死のけがれを洗いながすということを象徴する「Red Ochre」でペイントされる。この録音の中で、骨を準備する男性の声とその動きを聞くことができる。Johnny Mundrugmudrugがシンガーで、Peter BarkerによってBlyth River地域で1978年に録音された。

■MORNING STAR : 明けの明星
「Goyulan」もしくは「Bornumbirr」という名前はMorning Star(明けの明星)、金星のことである。この重要な歌は「Goyulan」という名前で知られるソング・シリーズ全体の名前にもなっており、「Rom」もしくは「Marrajura」の儀式の中心になっている。そしてアーネム・ランドのこの地域のアボリジナルは、自分達がMorning Starスピリットに敬意を表してきたと信じている。儀式の間、赤いオーカー(顔料)と白色粘土で彩られ、ベンガルボタイジュの木の繊維で作ったヒモで黄色、白、オレンジの羽根を組んだ長いポールが準備され、精巧なMorning Starダンスの中で使われる。そのポールは霊的存在の本質を表わしている。

その歌は、Morning Starを天体、擬人化された女性の姿、そして儀式的聖像とみなしている。金星は夜明け前に毎日空に現れ、夜があけてしまうと、彼女は死ぬ、もしくは消え去ってしまう。儀式の進行を執り行う人々のグループは、彼女を取り戻す予定だったのだが彼女の消滅により、激しい悲しみにくれる。このドリーム・タイムに起こった出来事は、アボリジナルが今でもとりおこなう「Marrajura」の儀式の原形である。

■GOYULAN(Morning Star)の歌詞
英訳
Morning star comes and confronts the dawn,
a cluster of morning star
confront the dawn,
coming from red ochre country,
morning star, Bornumbirr;
Morning star is coming,
true bone, true substance of Bornumbirr,
orange and white feathered string
bound around her body,
around the morning star pole.
日本語訳
明けの明星が昇ってきて 夜明けの空に向かっていく
明けの明星が夜明けの空に向かっていく
赤土の大地から明けの明星が昇っていく
明けの明星 Bornumbirr
明けの明星が昇っていく
Bornumbirrの本当の姿、その実体
彼女の身体、モーニングスター・ポールには
オレンジ色の羽と白の羽で飾られたヒモがしばりつけてある