ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -Walking with Spirits フェスティバル編 2-

【フェスティバル会場への道】

僕らは次の日から早速「Walking with Spirits」フェスティバルの会場となるWugularrコミュニティへ出発することにした。その前に念のためココズの管理人であるトニーにコミュニティまでの道路状況を確認してみる。実はキャサリンに来る前に立ち寄ったダグラス・ホット・スプリングスという温泉へ向かう道の途中に突然小さな川が出現したのだ。日本の感覚で考えると「川があったら橋がある」というのが当然だが、ここはオーストラリア、なにもなかった。

今回も僕らがレンタルしているのは普通のセダンだったため、小さい川とはいえヒヤヒヤしながら渡ったのだった。車に傷でもつけようものなら膨大な金額が請求されることは間違いない。Wugularrコミュニティまでの道の途中に未舗装路、ましてや川渡りなどあろうものなら再び冷や汗をかくことは間違いなかった。

「トニー、Wugularrrまでの道の途中に川渡りなんてないやんね?」
「ああ、Wugularrrコミュニティまでなら完全舗装されているからまったく問題ないやろ」

ほっ、よかった。
これで安心して出発できる!さあついに念願のWugularrrコミュニティに出発だ。

レンタカーとノリくん

写真は途中で立ち寄ったホットスプリングに向かう道にあった小さな川。 意外なところで川渡りを強いられる場合があるので注意が必要だ。

ユウジは一足先にフェスティバルのスタッフとして現地入りしていたので、僕とのりくんだけでココズを後にした。昨日新しく出会ったノン君たち、そしてはなちゃんたちとは現地で落ち合うことを約束していた。

道筋は途中までBarungaフェスティバルの時とまったく同じ。Barunga編で紹介したWugularrrコミュニティの看板の横を駆け抜けセントラル・アーネム・ハイウェイをひた走る。Barungaコミュニティを通り過ぎると、ここから先はまだ訪れたことのない未知の場所だ。

新しい物事に挑戦する時はいつでも心地のよい興奮と多少過大気味の期待、そしてほんの少しの不安がつきまとう。スピーカーから流れるのはWugularrrコミュニティ出身の伝説のディジュリドゥ奏者David Blanasi氏のアルバム「Didjeridu Master」 。彼は2004年を境に忽然とコミュニティから姿を消してしまったため、残念ながら今回彼に出会うことはできないと思う。だけれど、彼のディジュリドゥの音を聞いていると、低木が続く乾いたブッシュの間からヒョコッと彼が現れそうな気がした・・。

そんなことを考えながら、ふと気が付くとそれまで平坦だった道に大きな起伏が現れた。 その起伏を越えたところがフェスティバル会場であるWugularrrコミュニティだ。 というか、「フェスティバル会場であるはず」のWugularrrコミュニティだった。


【David Blanasiの音源の紹介】

下記CDはWhite CockatooことDavid BlanasiのCDでディジュリドゥ奏者名義のCDとしては史上初のアルバムです。

Didjeridu Master DAVID BLANASI -Didjeridu Master
CD 1998年 Bigban 2,200yen
Kunbjorrk(GUNBORG)スタイルの天才的Mago(ディジュリドゥ)奏者デビッド・ブラナシの大地をひきずるような倍音に溢れた、全世界必聴の一枚!


「うおー、のりくん!ついに到着!」
「あれっ?でもまったく人の気配がないですね・・なんでやろ?」

のりくんの言うとおり、辺りはひっそりとしていてとても静か。人の気配もまったくといっていいほどなかった。ここでフェスティバルが開催されるとはとても思えない。 とりあえずトロトロと道を流していると道端に申し訳程度に置かれた小さな看板が・・。

「フェスティバル会場こちら→ ここから15km先」
生還を記念して

これはフェスティバル会場から「生還」したときの記念写真。
「生還」と表現した理由については次の話をお楽しみに。

なーるほど!会場は別に設営されているわけだ。これですべての疑問は解けた。 ところがすっきりとした気持ちで目線を看板の先へ向けてみると、そこから先は乾いた風が砂埃を巻き上げる見事なダートロードだったのである。

「・・・。のりくん、これってすごーーーくやばい気配がしない・・?」
「そっ、そうですね・・いかにもやばそうな道ですねえ・・どうします?」

しかし脳内アドレナリンというものは人間の正常な思考を狂わせるのだろうか。 さっきまでの二人の弱気な発言とは裏腹に、気づけば僕らのピカピカレンタカーはすでにそのダートロードに進入しはじめていたのであった。