ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -Walking with Spirits フェスティバル編 1-

【ノン君登場!】

Nicky Jorrokとの素晴らしい出会いから数日後。日本での過酷な就職活動を終えダーウィンに帰ってきたのりくんと共に再びキャサリンのココズ・バックパッカーへと戻っていた。近々Wugularr(Beswick)で開催される「Walking With Spirits 」フェスティバルに参加するためだ。そして、今回もピカピカのレンタカーを借りてココズのゲートをくぐった。

「どこのお金持ちが入ってきたのかと思ったやん(笑)。」
といったのははなちゃん。やっぱりココズにピカピカの車は違和感があるらしい。とにかく当たり前のように宿の庭にあるキャンプサイトに移動して慣れた手つきでテントを設営し、自分達のくつろげる場所を作る。

くつろぐカンチくん

ココズではみんなそれぞれのスタイルで居心地のいい場所を作り出す。 写真はテントを持たずブルーシートで寝泊りしていたカンチくん。

ココズはディジュリドゥを吹く人たちにとってとても快適な場所だ。以前にも紹介したオーナーのココさんは宿よりディジュリドゥの店がメインだと豪語しているし、自分でもディジュリドゥを演奏するため、訪れた人たちにこう言うのだ。

「うちは24時間ディジュリドゥ吹き放題だからね!」

実際は吹かない人たちも大勢ステイしているため、彼らに配慮して午後10時を過ぎあたりから吹きにくくはなるのだが、こんなことを堂々と宣言するバックパッカーのオーナーはそうそういないはずだ。

僕らも自分達の居場所を確保したあと日が暮れるまで、ずっとディジュリドゥを吹き続けていた。Nickyの音やHenryの歌を思い出しながら吹いていると、ココさんがやってきて一言こういってくれた。

「ハル、前より音がよくなってきてるなあ!」

彼は嘘やお世辞をいうような人ではないのでこの言葉は素直にうれしかった。自分の音というのは自分ではなかなか客観的に聞くことができないので、ココさんのようにある程度の時間をあけて客観的に聞いてくれる存在はありがたい。こんな意味でもココズはディジュリドゥを吹く人たちにとって居心地のよい場所なのだ。

あたりが薄暗くなってきた頃、ゲートのほうから見るからにオーストラリアをラウンドしてそうな一台の青いバンがガタガタと入ってきた。その車からバラバラと数人が降りてきて楽しそうに会話していたのだが、よく聞くと日本語、しかも関西弁が飛び交ってるのが聞こえた。彼らのほうをなんとなく気にしながらもディジュリドゥを吹き続けているとその中の一人がツカツカとこちらのほうにやってきて突然こういった。

「もしかしてデグチさんですよね!」
「へっ??そうやけど・・・」

いきなり名前を呼ばれた僕は少々戸惑い気味に返事をした。 きれいに整えられたドレッドがやけに似合っている彼の名前はノン君。

「Pinecreek Gold Rush Festival」以降ココズに滞在していたユウジから僕の名前を聞いていたらしい。詳しく話を聞いてみるとユウジとノン君は昔からの知り合いだったのだが、 オーストラリアで再会できたのは偶然だったらしい。やはり世界は狭かった。

彼は自分のポリシーというか独自のスタンスをはっきりと持っていて、彼の視点から繰り出される言葉は鋭く的を得ていて面白かった。しかしつぎつぎと飛び出す大胆発言に僕もタジタジ・・・。
テープを巻くノンくん

自分で作ったディジュリドゥにビニールテープを巻きつけるノン君。 その時の目は必殺仕事人のようだった。

「僕ね、人のCDとか聞くの大嫌いなんですわ。あんなんアレでしょ?自分が気持ちいいだけでしょ?ちゃいますデグチさん?」

「うっ、うん・・そっ、そうかなあ・・」

「でもね、ユウジがね、デグチさんトラッドのおもろい音源持ってるっていうてたんです!トラッド!聞いてみたいんですわ!聞かせてください!」

「ああ、ええけど・・。うーん、ほんならどの地域から聞きたい?」

これが今後さまざまな地域、フェスティバルを一緒に旅することになるノン君との最初の出会いだった。そしてこのノン君が「これっ!ヒップホップですやん!」と大絶賛したCD「Rak Badjararr」が録音された地域であるBelyuenを訪れたとき、地元のソングマン達から口々に「おまえはKanbiマンだ!」と親しみをこめて呼ばれるようになるとは、このとき僕はおろか彼自身もまったく想像していなかった。

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