ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -バルンガ・フェスティバル編 2-

【すべてを変えたレンタカー】

どうなる事やらと心配された今回の旅だったが、ピカピカのレンタカーは見掛け倒しではなかった。前回のトラブルが嘘のような快適さでアウトバックを軽やかに駆け抜ける。クーラーの利いた車内はまるで某コマーシャルのような静けさ。音楽もスピーカーから軽快に流れ出し、僕は何の不安もなく鼻歌まじりに楽しく運転。まさか車が変わるだけでこれだけ違いが出るとは思わなかった。さらに今回はボロボロのランドクルーザーをあっさり抜き去る平均時速150km。新車同然のFORD車は、アクセルを軽く踏むだけでアッという間にそんなスピードになってしまう。結局何事もなく、たった2時間弱で320km離れたキャサリンに到着してしまった。

ところが、前回とはまったく違うなんとも悩ましい問題が表面化した。キャサリンではユウジが以前一度滞在していたという、その筋では有名な(どの筋かは後ほど解説あり)バックパッカーへ向かったのだが、入り口まできてハタと気づいたことがあった。

Coco's BPのゲート

これがそのバックパッカーの入口。手作り感に溢れている。

目の前には手作り感溢れるゲートが迎えてくれている、が、しかしなぜか気まずい・・。 中をのぞけばいかにも使い込まれたボロボロの車が並んでいる・・やっぱり気まずい。

つまり僕らの「太陽にキラッと輝くピカピカのレンタカー」がこの宿の雰囲気にまったく合わないのだ。 なんだこの圧迫感は?前回のガタピシ車なら何の問題もなくくぐれたゲートが、この車だと異常にくぐりにくい。結局いったん車を外に置いて歩いてゲートをくぐった僕らの心境は言葉にできないほど複雑だった・・


【貧乏旅人のオアシス、Coco's Backpackers】

このCoco's Back Packers(以下ココズ)は、なんとも変わったバックパッカーズで宿の隣にディジュリドゥ・ショップが併設されおり、この宿の名前の由来でもある最高にイージーなおっちゃんココさんは宿のことなどほったらかしでディジュリドゥ作りやアボリジナル関連の情報を集めることに励んでいる。つまり先ほど言ったその筋とはディジュリドゥ関連の筋のこと。この宿のキッチンで知り合いの日本人ディジュリドゥ奏者であるGORIくんや上野さん、西崎さんたちの写真を発見したときはかなりの衝撃を受けた。世界は狭い。

この宿は1泊15ドルで泊まれる良心的なバックパッカーズである。ダーウィンのバックパッカーズが、のきなみ20ドル以上することを考えるとそれがよくわかる。にもかかわらず、結構広いキャンプグラウンドが併設されており、そちらはたった8ドルで宿泊できる!これはもう貧乏旅人のオアシスである。

ノーザン・テリトリーでは乾季の間、雨はまったく降らないため、貧乏バックパッカーはほとんどキャンプを選択する。その結果、ココズのメインであるはずのベット部屋の方はほとんど人気がなくなる。自分で自分の首を絞めるというのはこのことか?という状況だ。しかも管理人のトニーというおじいちゃんはなぜか日本人好きで、日本人だけ特別価格の一泊7ドルにしてくれる。普通に考えると「なんだそりゃ?」というシステムなのだが、これがまかり通っている。

ディジュリドゥ作りに熱中するオーナーのココと管理人トニーの好みに左右されるわけのわからない料金システム。

僕には最初この宿がどのように成り立っているのかまったく想像ができなかったのだが、時間とともにこの宿のまるで竜宮城のような浮遊する時間感覚の虜になり、気がつけばココズは僕らの重要な活動の拠点になっていた。
ユージとコリ

ココズに流れる時間は独特だ。気がつくと一週間が過ぎていた、なんてことも。 写真はユウジとポイの達人、コリの朝の一コマ。平和だ。

話はすこし戻って、一念発起してゲートをくぐった僕らだったが、中はあまり人の気配がなく以外にさびしい雰囲気だった。 入口を入ってすぐの開放的な?ダイニングルームのような部屋に入ると2人の日本人の女の子がしゃべっていたので、ユウジがトニーとココさんの居場所を聞いみる。

「トニーかココさんはおる?」
「えー?さっきまでいたけどどこかに出かけたんちゃう?いまはおらへんみたい。」

あららまた関西弁・・。のりくんは大阪市内、ユウジは奈良、ヨウスケは京都。この2人も大阪周辺だった。僕はこの時点でまだ関東の人にあったことがなかった。まさかダーウィン周辺には関西人の比率が高いのか?なんとも不思議だ。

彼らの帰りを待っている間2人とすこししゃべっていたのだが、なんと彼女達もBarungaフェスティバルに向かう途中だというではないか!それどころかここに宿泊しているメンバーのほとんどが明日のフェスティバルに向かって出発していったのだという。だから今日は人の気配がないらしい。

これはMerrepenのフェスティバルの時とはまったく違う状況だ。今回は期待できるかもしれない!僕はそう直感した。そうとわかればぐずぐずしていられない。僕らは急いで準備をすませ、すでに出発していった彼女達を追いかけるようにココズを後にした。