ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -大陸縦断 前編 1-

【大都市シドニーは寒かった・・】

「パッパーーーン!!」

「ファーーーック!!」

高らかに響くクラクションと運転手の舌打ち。一秒を競うかのように次々と流れて行く車。耳鳴りするような都会の喧騒。そして粘膜にまとわりつくような排気ガスの臭い・・。昨日までブリスベンの美しい森のなかで鳥や動物たちに囲まれて生活していた僕と真弓にとって、シドニーはあまりにも刺激が強い街だった。

「だーかーらー、東京ヴィレッジ!Do you know?」

「あ・・ああ??東京・・What??」

空港からホテルを巡るシャトルバスの運転手に、目的のバックパッカーズ(オーストラリアの安宿)の名前を伝えるが、運転手の返事はなんとも頼りないものだった。「知らないならさっき確認した時に言えよ!」という不満を抑えながら直接宿に行くことをあきらめ、シドニー・セントラル駅という所でバスを降りる。とりあえず降りてはみたものの、僕たちは待ち合わせの宿の場所を知らなかった。こんな時、携帯電話を持っていてよかったーと思う。Goriくんに話してみると宿はこの近くということで、駅で待ち合わせることにした。

大都会シドニーの忙しさのせいか、空港からここまでたった1時間程度なのに僕たちは精神的にグッタリと疲れきっていた。重いバックパックを引きずるようにしながら待ち合わせ場所である駅のコンコースへと向う。

シドニー・セントラル駅は重厚な雰囲気を持つクラッシックな建物で、ここからオーストラリア全土に向かう列車に乗ることができる。コンコースは高い吹き抜けになっていて、列車の出発や到着を伝えるアナウンスが冷たく響く。
セントラル駅と真弓

これがシドニー・セントラル駅。無機質な建物がよけいに寒さを感じさせる。

「なんか・・、寒いなあ・・」

ブリスベンより南にあるシドニーは実際に気温も低いのだけれど、すれちがう人たちの表情も心なしか冷たいように思えてくるから不思議だ。なんとなく居場所のない、落ち着かない気持ちを隠しながらバックパックに寄り添うようにして迎えを待った。

Walking Down the Street

やっぱり仲間がいるとなんでも楽しい。写真はノンくんのドレッドに絡みついて取れなくなった見た目ドレッド風の植物。

しばらくすると、見覚えのある2人が近づいてくるのが見える。仁王さんの怒髪を模したというGoriくんの頭と、ノンくんの顔より大きいドレッド用のキノコ帽子はシドニーでもやっぱり目立っていた。

「うーい、にいさんら、お疲れー」

いつもと変わらない彼らの声を聞いてはじめて、寒く冷たかったこのシドニーの街に、やっと暖かく、くつろげる場所を見つけたような、そんな気がした。