ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -アーネム・ハイウェイ - Yirrkalaへの750km 前編 2-

【トラウマとともに】

ついに始まったアーネム・ハイウェイの旅。目指すYirrkalaの町までは750kmのロングドライブだ。 Walking with Spiritsフェスティバルで訪れたWugularrコミュニティを過ぎれば、そこから先は今まで足を踏み入れたことこのない未体験の世界。

カオナシ
この道の先にYirrkala、そしてGarma Festivalが開催されるGulkulaの地が待っている!
僕達の前途を祝福するかのような澄み切った青空の下(乾季だから当然なんだけど・・)、大きな期待と少しの不安、そして大量の水と食料、ガソリンを荷台に積み込んで、愛車ランドクルーザー「トゥルーピィ」は豪快な砂煙を上げながら乾いたブッシュを疾走していた。

初めてブッシュを訪れた時には「どこを見てもまったく同じ」に思えた風景も、見慣れてくるとその表情をさまざまに変えていくことがわかってくる。

視界の両側に広がる一面のユーカリの森も、柔らかい黄緑色から爽やかな新緑色、枯れたような黄土色、ブッシュ・ファイアに焼かれた黒まで、さまざまに変化する。水平線まで続く道を覆う土の色も、中央砂漠地帯にそびえる一枚岩ウルル(エアーズ・ロック)を想わせる鮮やかな赤茶色から、太陽の光が反射して目が痛くなるような真っ白い砂の色までめまぐるしくその色彩を変えていく。そしてどこまでいっても変わらない澄み切った空のブルーが、果てしなく広がるオーストラリア、そしてアボリジナルの人たちの悠久の大地アーネム・ランドをくっきり浮かび上がらせていた。

久しぶりのダートロードにいつもより少し緊張気味だったのは僕とGORIくん。 なぜなら僕達は2004年に横転事故を経験しているため、ダート・ロードに対する恐怖感が心と体に刻み込まれていたのだ。

自分では意識していなくても後輪がすこし滑っただけで心臓がドクドクと高鳴り、手から汗がジンワリと滲み出てくる。「もしかして・・これがトラウマ?」と人生で初めて認識する破目になる。そしてこの状態で長距離を走るのは精神的にも肉体的にもかなりの負担がかかることだった。

そんな状態の2人を横目に、大活躍だったのがノン君。

彼は事故を経験していないだけではなく、何時間走り続けても飽きないというほどの運転好き。しかも瞬発力や判断力にすぐれているのか、突然カンガルーが飛び出してきたり、急に路面状況が変わったりした時のとっさの対処がとてもうまかった。おのずとノン君の運転の時間が長くなっていた。僕達は彼の運転に絶大な信頼を置いていたのだが、たまにコルゲーション・ロードで車が大きく滑ることがあるとこんな感じだった。

まずノン君の反応・・
「おおっとっ!ウッヒョー、滑った滑った!!この感じ、マジでおもろいわ!!うひゃひゃー!!」
嬉々として運転を楽しんでいる。

そしてトラウマ・コンビGORI&出口の反応・・
「はうっ・・・。」「ぐっ・・。」
口には出さないが冷や汗タラタラ、心臓バクバク。

そして紅一点のわが嫁、真弓はというと・・
「ふんがぁっ、Zzzzz・・」
どんな状況でも爆睡できる鉄の心臓の持ち主だった・・。

カオナシ
首を痛めたGORIくんの姿を見て「映画『千と千尋の神隠し』のカオナシかとおもったわー」と笑うメンバー。ちょっとかわいそうやけど自業自得だ。

こんなのんびりとした?風景を織り交ぜながらひたすらブッシュを走り続けるのだが、もうひとついつもの車内の状況と少し違うところがあった。

それは車が大きく跳ねるたびに聞こえる「うっ・・」「イタタ・・」といううめき声。

その声の主は眉間に皺を寄せ、ひたすら苦痛に耐えるGORIくんだった。実は彼はトラウマ以外に意外な問題を抱えていたのだ。それがこの写真!

彼は出発の前日、「とても人にはいえない理由」で首を痛めてしまい顔を回すことができない状態だったのだ。彼の名誉のためここでは書かないが、僕たちはその理由を聞いてあまりのしょーもなさに倒れそうになった(笑)。決してイダキの特訓のしすぎではないことを断っておく。こんな状態で車が跳ねまくるブッシュは間違いなくツライ!トラウマと首の痛みの二重苦でGORIくんの表情に笑顔は一切なかった。

すれ違う車以外はほとんどなにもイベントのないアーネム・ハイウェイの旅なのだが、たまーに遠くからすごい砂煙と爆音を上げる車が迫ってくることがある。その正体はなんと!全長50メートルに達することもあるという3両編成の輸送用大型トラック!

オーストラリアではこのトラックのことを「ロード・トレイン」と呼び、アウトバックの1つのシンボルにもなっている。名前の通りその姿はまさに列車!驚くことにJR車両2両半の長さである。

砂煙をまきあげながら走るロードトレイン
爆音と砂煙が半端じゃない!これはオーストラリアでしか見られない光景だろう。豪快すぎる。

その先に街がある限り、ダート・ロードもお構いなしに走りまわるこのとてつもない怪物トラックに、オーストラリアのタフさと豪快さを感じるのだった。

そして陽が傾きはじめたころ、僕達の唯一の目標は明るいうちに目的地にたどり着くことになっていた。もし暗くなってしまえば初めて経験する道だけにキャンプ地がどこかすら分からなくなる恐れがあったからだ。ノーザン・ランド・カウンシルでもらった頼りない地図では到底わかるはずもない。とにかく早くたどり着くことが最優先された。そして太陽が目線の高さまで傾き、心がソワソワと落ち着かなくなりはじめたころ、やっとその日のキャンプ地であるMainoruという場所を示す標識が現れた!ホッと胸を撫で下ろすメンバー。なんとか無事にキャンプ地にたどり着きそうだ。そしてなんの疑いもなくその指示にしたがったのだが、このときアーネム・ランドのいたずらに気がつくものは誰もいなかった・・。