David BlanasiやDjoli Laiwangaの盟友であり偉大なソングマン・バンブーマンであるTom KellyのショートMago。
Tom KellyはDavid Blanasiと同世代のソングマン・バンブーマンとして広く知られている。音源としては「
Songs of Bamyili」ではTom YorkdjankiとしてDavid BlanasiにひけをとらないMagoの演奏をしている。
Earth Tubeを立ち上げる前に「
Music of Aboriginal Australia」というカセットを見つけた。そのジャケットにはDvid Gulpilillと思われる人がかなり短いMagoを鳴らしている写真が使われていた。当時、「なんだこのおもちゃみたいな楽器」と思ったことを覚えている。
この音源に録音されているのが誰なのかは不明だが、1曲目の「Dance of the Owl」という曲はサウンドや録音状況からDavid Blanasiであると思われ、「A#」というウルトラハイピッチのMagoが使われている。
このMagoは「G」だが棒切れのような見た目がすごく似ている.......。
またTom Kellyの描くアートも現在のWugularrコミュニティの作品にはもう見られなくなってきている細くこまかいクロスハッチで描かれていて、現存するDavid Blanasiの樹皮画に描かれているラインとすごく似通っている。
2004年にTom Kellyに会った時には足を悪くしていて、もうMagoは作っていないと話していたが、今回奇跡的に1本だけ彼の作ったMagoを発見した。
バックプレッシャーは高く、ドローンの音域はせまく固い音質で、ギチギチの演奏感なので、普通に鳴らすととっつきにくいが、この楽器のバックプレッシャーを受け入れ、きっちりとハミングを合わせてあげると、フラットながらアグレッシヴにせめたてることができる。
ギラギラとした激しく渦巻く倍音はダイナミックな舌の動きにからみやすく、ピンポイントでどこかをねらっていくというよりも全体をルーズに引き回すようなイメージで鳴ってくる。
低音はほとんど鳴ってこず、中高音にすべての倍音がつまっていて、高音域も中音によっている。スムーズに鳴らせれば、音量が思いのほか大きく、見た目からは想像できないほどギャンギャンにうなる。
マウスピースからはノミ入れはなく、ボトムからは25cmほどが空洞をきれいにするように丁寧に削られていて、製作者の意図が伝わる。
Wugularrの黄金時代を駆け抜けた巨匠たちの一人Tom Kellyの細く小さく、カチカチのサウンドながら激しくうなるショートMago。